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□曖昧な関係
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「好きです…っ、付き合って下さい」


ただの自己満足で、片思いしていることが辛かったから玉砕覚悟で告白したのだけど…


……帰ってきた言葉は「いいよですよ」


「え…え、嘘?」


「何?嘘だったんですか?」


「違…っ、ほ、本当にいいの?」


「いいよですよ?あ、今日家に来下さい」


「う、うんっ」


男子校に通ってたからかもしれないけど、同性愛に偏見のない空気で俺は新川朔(あらかわさく)を好きになってしまった

特に仲良かった訳でもなく、一回話して親切にしてもらっただけ
でも向けてくれた笑顔に惚れてしまったのだ

端から見てるだけでも良かったのだけど…
新川は凄く目鼻立ちが整っていて、簡単に言えばイケメンってやつ
同い年とは思えないくらい大人っぽくて落ち着いている
頭も賢く、運動もそつなくこなし、学校中の人気者だった

反対に俺は容姿は普通だし勉強も運動も特に出来る訳じゃない
内気だし落ち着きもあまりない…

告白される新川を見て日々落ち着かなかった
それが段々辛くなってきて…どうせ叶わない恋なのだから、と諦める為に告白したんだけど…

ま、まさか付き合ってもらえるなんて…


浮かれたまま迎えた放課後
緊張してしまいあまり話せないまま一緒に帰り、通された部屋は新川には似合わない程散らかっていた

「片付けるのが苦手だから掃除してくれないかな」

初めに言われた命はこれだった

俺はそれを快く受け入れ、ビニール袋を片手に部屋を掃除して回った
大方片付け、洗濯機を回している間に「晩ご飯を用意してほしい」と頼まれた

コンビニで買うか迷ったけど、せっかく頼んでくれたのだから、スーパーで材料を買えば料理を作った

それなりに美味しい物が出来て安心し、新川はそれを黙ったまま食べていた

洗濯物も全部干せば外も暗くなってしまったので、別れを告げれば俺は家へと帰った


こんな生活がこの日だけでなく、何日も何ヶ月も続いた
1ヶ月も過ぎれば合い鍵まで渡されてしまい、俺は浮かれる一方


頼ってもらえてる気がしたし、付き合ってもらってる感があったから、文句も言わずに頼まれた事をこなしてきた
それに何より新川の傍にいれるだけで嬉しかった

美味しい物を食べさせたくて料理の本とか買って、一人で練習したりしていた

でも合い鍵を渡されてからは家に新川がいない時が増えた

誰もいない部屋に掃除機を掛けながらご飯の支度
…それにたまに虚しさを感じる事はあったけど、新川の為だと思えば嫌ではなかった







――――

「それでさ、今度のデートは映画見に行こうと思ってるんだけど」


「うん」


「依緒(いお)、聞いてる?」


「うん」


「今日は雨だね」


「うん」


「依緒っ!」


「え、あ…ごめん、お昼ご飯の話だっけ?」


「…はぁ、最近どうしたの?元気ないみたいだけど」


友達の話を真面目に聞いてたはずだったんだけど…話は惚気話で
昔は聞き流せていたのに今はあまり聞きたくなかった
付き合ってもらってるから仕方ないのかもしれないけど、新川とどこかへ行ったりとか、手を繋いだりとかしたことがない
キスとか、好きだとか言われた事も勿論ない
これって本当に付き合ってるって言えるのだろうか…
ただ傍にいれれば良かったので何も望んではいないのだけど…寂しくないと言えば嘘になる
友達の話を聞いてると自分が間違ってる気がして、頭が拒絶してしまってたみたい


誤魔化したもののあまりにも真剣に心配されてしまったので、新川だと言う事は伏せて友達に話した


「……なにそれ、依緒利用されてるだけじゃん」


「そう…なのかな」


「愛してもらってるならともかく、家政婦じゃないんだから…」


「…やっぱり変だよね」


「そんな奴なんかの傍にいない方がいいよ」


「うん、ありがとう。ちょっと考えてみる」


利用されてる…か
分かっていたつもりでも友達から聞くと余計に重くのしかかる
…新川ならきっと俺でなくても傍にいて身の回りの事をしてくれる人がいるだろう

諦める為に告白したのに、付き合ってもらったと思ったら家政婦させられて…でも傍にいれるだけで嬉しくなって…
でも家には新川がいない訳だから結局最近の頃の端から見てた時と変わらなくて…


あーあ…いったい俺は何がしたいんだろ


やるせなく外を見れば、俺の気持ちとは正反対な、眩しいくらいの晴れだった
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