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□涙から始まる恋
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俺の通っている学園はちょっと変わっている
全寮制の男子学校なのだが、面接に容姿審査もあるのだ

だからこの学園は悪くて中の上くらいの平凡、もうほぼ全員美形と言う訳
偏差値もそれなりに良くて、部活の面でもそこそこな成果もあげている

そんな端から聞けば上品そうな学園なのに、やはり年頃な男が閉鎖的な空間にいるんだから、喧嘩があることもしばしば

それを取り締まり、規律を守っているのが生徒会
顔がよくて人気があるのは勿論なこと
学生全員を纏め上げなければならないのだから力が強い者が頂点に、生徒会メンバーになっている
そして生徒会メンバーの中でも一番上、生徒会長が言うことは絶対であり、学園のルールである
その影響力からか生徒会長をみんな"帝王"と呼んでいる
見た目はクールながらその行動力の速さから人望は厚く、みんなの憧れの的な帝王
学園が一纏めになってるのは、この帝王含む生徒会メンバーのおかげなのである


そして、なぜそんな生徒会の説明をしたかと言うと、俺がその生徒会に非難を受けているからだ
帝王は俺に何も言ってこないけど、多分そう言う事をする性格じゃないからだと思う


「なぜ君のような人がこの学園にいるかわかりませんね」


…俺にも分かりませんよ
後から気付いたけど、俺を面接していた面接官が眼鏡を掛け忘れてたんだよ…


「いるだけでも不愉快なのに、有亜(ありあ)の傍にいないでよ」


好きで傍にいる訳じゃないんだ
たまたま同室になっただけなんだ


「有亜の迷惑も考えなよー」


…俺の方の迷惑も誰か考えてほしい


「そんな事言っちゃいけないんだぞ!六宇(むう)は俺の大事な友達なんだからな!」


…名前教え合っただけで友達って、随分社交的な考えだと思う
内気と自覚するくらいの俺には理解し難い…


1ヶ月程前に藤崎(ふじさき)有亜が転校してきてから、俺の日常が変わってしまった


俺は自覚があるくらいの不細工で…そもそも容姿審査があるなんて受験するまで知らなかったのだ
そんな俺が面接官が眼鏡を掛け忘れると言う手違いで受かってしまい…こんな美形ばかりの学園ではかなり浮いた
ここは制服はあるもののどう着こなしても自由
容姿のいい人ってのはセンスも良くて…指定のシャツではなく柄Tを着たりアクセサリーを着けたり
普通に制服を着ているのも俺くらいで
そんな浮いている奴と友達になりたい人もいなくて…自分からもあまり話かけないので友達はいない

ただ、一人でいる事は嫌いじゃない
幸いかどうかは分からないけど、偶々一人部屋に当たったので気を遣わなくても済んだ
この学園には充実した図書室もあり、逆に開き直って静かな学園生活を送っていたのだが…


転校してきた…何だか見た目がもさい藤崎と同室になってしまい、挨拶を交わせば友達にされ……そんな見た目とは裏腹に超絶元気いっぱいで、何故か次から次へと美形の友達を作っていった
それもかなりの美形ばかりで…と言う事は生徒会のメンバーをも友達にしていったのだ

ここまではいい、ただの同室者が沢山友達を作っただけ
転校してきたばかりのに、凄いねって褒めたっていいくらい

…だけどどこへ行くにも俺を連れて行くんだ
それこそ朝ご飯から移動教室、放課後まで連れまわし、それも断っても無理矢理連れて行くので、その力強さのおかげで俺の腕は青あざだらけだ

おまけに藤崎の周りは美形だらけ
藤崎も見た目があまりよくないから周りから僻まれているのだが、生徒会メンバーに守られいるから嫌がらせはない
だけど俺は誰にも守ってもらえず、むしろ藤崎の憂さ晴らしまで俺に回ってきて…嫌がらせが凄く生傷も絶えない


はぁ…何でこんな目に合わなきゃいけないんだ…


「…お手洗い行ってくる」


こんな所にいたくなかったので、藤崎にそう告げれば別れた
流石にトイレまではついて来ない…最近身に付けた回避方法だ
勿論トイレは行かず、藤崎の元へも戻らない
藤崎がいるかもしれない部屋に帰れないので、どこかで時間を潰している
それでも頻繁に使うと本気でトイレに行きたい時も「またどっかに行くんだろ!気なんか遣わなくていいんだからなっ」と言われて離されなくなるので慎重に使っている

最近は好きだった図書室にも藤崎に見つかってしまうので行けず…何となく外の空気が吸いたかったので屋上へと足を進めた
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