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□赤と青
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いつも無口で無表情
黒髪に眼鏡、おまけに学ランを着崩す事なく真面目腐った見た目

それなのに、どんな不良が話し掛けても動じない
むしろ無視すらする始末

力量を知る者はいないものの、その落ち着いた姿からうかつに手が出せず一目置かれた新入生


そんな子のお話


―――


僕が通っている高校はガラの悪い学校だ

生憎、僕の頭で行ける学校はここか、私立しかなかったのだ

理由は元から要領が悪い
そして目も悪くて黒板が見えなかったのだ
眼鏡を買うのも何だか面倒で…ずるずると3年間が過ぎれば授業がちっとも分からなくなっていた

親に面倒かけたくなかったし、公立の方が近かったのでこの高校に決めたのだけど…


もう髪が黒いのは僕くらい…
共学なんだけど、元々が男子校だったみたいで、こんなガラの悪い所に女の子を入学させる親もおらず

もう男子校だった


高校に入ってから少しは勉強しようと思って、やっと眼鏡も買ったんだけど…

そもそも登校してる生徒だって少ないのに、何度先生が注意しても授業中生徒の話し声はやまない

先生も諦めたようで淡々と授業を進めていく

……だから授業についていけない

まぁでも、出席さえしてれば単位が貰えるのが救い
テストも難しくなく、何となく理解していれば選択肢があるのでそれを埋めていけばいい


友達は出来ず、味気ない学校生活だけど、好きな授業があったので特に苦ではなかった




「ちょっと面貸せ」


だけど真面目な僕が目についたのか、呼び出される日が来たのだ

しかも呼び出したのは赤毛の先輩、名前は知らないけど「紅蓮」って呼ばれいる
この学校で一番の問題児とされている生徒だ

そんな人に声を掛けられている僕を助けてくれる人などおらず、すれ違った先生でさえ見てみぬ振りをして去っていった


……とうとう今日が命日です


殴らてカツアゲされたあげくにパシりな生活がこれから始まるのだろうか…

もう怖くて返事も出来ずとぼとぼとついて行った先は校舎裏


そこには何かガラの悪い人達がいて、絶体絶命のピンチです

…もうここ数ヶ月、こんな僕が目を付けられず普通に通えてた事が不思議なんだ
運が良かったんだ、そう思って諦めモードに突入していると…


「随分調子に乗ってるらしーじゃねーか、仲間が声かけても無視したんだって?」


……きっとそれは気付いてなかっただけかと
だって僕に話し掛けてくれる人なんていませんもの…

どの人ですか…今からでも謝りますから…っ


「はっ、今も無視とはな。先輩が話し掛けてんだからちゃんと目ぇ合わせろよ」


ごめんなさいちょっと思い出に更けてました
それから怖くて声が出ないんです…っ

恐る恐る目を合わせて見れば…物凄く血走っていてその眼力だけで泣けそうです


目を反らせないまま過ぎる事数十秒
先輩はにやりと笑いました


「やる気か、いいぜ?どうせそのつもりだったし、な!」


いい終わるのと同時に真っ直ぐ顔面へと伸びた先輩の拳

鼻先で止められたらその拳に、早過ぎて身構えるのも目を閉じるのも忘れていた


「…いい度胸だな…次は本気で当てるぜっ」


もう理不尽

殴られるのは覚悟の上だったけど…まだ新しい眼鏡が壊されるのが嫌で俯く

すると靴紐がほどけている
ピンチな状況だからだろうか
やけに頭が冷えてしまい、しゃがみ込めば呑気に僕は靴紐を結んだ

それから立ち上がれば頭に鈍い痛みが走る


な、殴らた…?


石頭とはよく言われたが、じんじんと痛む頭をさすりながら立ち上がれば……目の前に先輩が伸びていた


「おい…紅蓮さんが…」


「テンメェ!!」


ひ…っ
周りにいた仲間達が立ち上がり、今にもこっちに向かって来そうだったので無我夢中で走って逃げ出した
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