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球技大会当日

選手宣誓をしているのは、やっぱり七瀬

俺は手伝い、と言っても皆にゼッケンを配るくらい
試合の審判やら誘導をしている七瀬をすれ違い様に「ご苦労様」と手を伸ばして頭を撫でておいた


「優斗!」と下の名前で呼ばれて、危険を察知したので振り返らず俺は走って逃げた


七瀬は俺をクラスでは爽やかに「佐藤君」って呼ぶ
あの変態スイッチが入った時は「優斗」って連呼する

それを最近学んだ


まぁ、逃げるくらいなら撫でなきゃ良かったんだが
歩み寄るって決めたし、仲良くはなりたい
……変態行為を除いて、な


今頃七瀬は喜んでるんだろうか
あーあ…撫でておきながら何か恥ずかしくなってきた
…次一緒に試合なのに


そんな心配を余所に、何事もなく試合は行われた
もの凄く感じる熱い視線はきっと気のせい、…じゃないけど
それを気にしないように試合に集中する

キャーキャーと聞こえる黄色い声
王子様七瀬は何をしてもそつなくこなし、輝いている
今だって点数を稼いだ
そのおかげで試合に勝ち、もう次は決勝だ
仲間達とハイタッチしている七瀬を横目に壁を背に座り込む


勝ったのは嬉しいけど、疲れた…
正直そんなに体力もない
同じチームの奴らは体力のある奴ばかりで、足を引っ張らないようにするのが精一杯だ

今の試合相手だって体育会系のチームで、もうへとへと

少しでも体力を回復させる為に水でも飲みに行こうかな
そう思い立ち上がれば走ってくる女の子の集団とぶつかった
…引かれた並の衝撃だった

尻餅をつきその女の子達に目を向け、掛けられた言葉は「邪魔」

…「ごめん」と反射的に返し、泣きそうになるのをこらえながら立ち上がればズキりと足首が痛んだ


…捻った


クラスメートの男子に「ごめん、保健室行くから伝えといて」と伝言を残し、保健室へと向かった







「ちょうど良かった。これから体調の悪い人がいないか見回らないといけなくて、軽傷の子が来たら手当てしてくれる?もし何かあったら呼んで?」


「分かりました」


一応両足首見てもらい、片方の足に湿布と包帯を巻いてもらった
講堂に戻ってもすることが無かったかので了承した


靴下を履くのも面倒で、素足のままぶらぶらと揺らす
ぼーっと外を眺めれば、多分決勝試合だろう
周りの歓声にも力が入っていて、白熱したバトルが繰り広げられている

きっと講堂もこんな感じなんだろうな
七瀬達は勝っているだろうか


数名切り傷やら打撲した生徒の手当てを済ませながら、先生が帰ってくるのを待つのだが


…ちょっと退屈かも

欠伸を漏らし机に肘を付いてぼんやりしていれば、ドタバタと廊下から音が聞こえる
そしてガラリとまた扉が開かれた


振り返れば息を切らした七瀬がいた


「どうした?怪我でもしたか?」


「優斗っ、大丈夫?ねぇ大丈夫?」


「あぁ、大丈夫。捻っただけ」


心配して来てくれたのか?

包帯を巻いている足をぷらぷらと揺らして見せれば……その足に抱き付かれた


「優斗の綺麗な足がぁっ」


「うん、綺麗じゃないから。試合どうだった?」


「優斗が居なくてつまんなかったけど、勝ったよー。だから褒めて?」


「閉会式とか終わったのか?」


七瀬の言葉をスルーしながら足から引き離そうと押したり引いたりするが、がっちり抱きつかれれていて離れない


「うん、保健室の先生が優斗に帰っていいよって伝えて来てって、後の仕事はやるからって」


「ん、お疲れ様」


「今日の優斗優しいーっ、頑張って良かったっ!」


頭をくしゃりと撫でると叫ぶ七瀬
まぁ、頑張ってたのは見てたから
…仕事も投げ出して来てなくてよかった、流石王子様


「んー優斗ゆうとゆーと」


「こら、頬擦りするな」


引き離すのを諦めれば、頬を緩ませて足に頬擦りしてきたのだ


「ひっ、おい七瀬」


…足なんか舐めるなよ
まさか舐められるなんて思ってなくて、変な声を上げてしまった
それを聞いた七瀬がポカンと見上げてくる


「何だよ…」


「勃っちゃった」


気まずくて声を掛けたら可笑しな言葉が返ってきた
聞き間違いだと信じたい


「どーしよ…このままじゃ帰れないし、優斗可愛いし」


「可愛くないから、トイレでも行って来いよ」


「うー…またそうやって焦らす…照れなくていいのに」


恥ずかしいのは確かだが、決して照れ隠しじゃない

呆れて見下ろせば、熱っぽい視線で見上げられていてドキっとする


そして七瀬は目を伏せ……信じられない事に俺の足に高ぶった自身を擦り付けだしたのだ


「優斗ゆーと…これだけでイけちゃいそう」


「ま、待て!わかったからちょっと待って」


ふと蘇る記憶
このままではまた七瀬が俺を襲ってくるかもしれない
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