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「…と、これで決まりです。当日はゼッケンと鉢巻きを配るので――」


そうつらつらと説明している七瀬

隣にいる女の子は黒板に書いてある文字を紙に写している


七瀬は学級委員だ
その姿は様になっていて、女の子が騒ぐのも無理はないと思う


あの泣き虫がこんなに立派になって
何だか微笑ましくなってくる


なんて、昨日の出来事を無理矢理忘れて飛ばしほのぼのとしていた時


「七瀬、手伝いに1〜2人誘ってもいいぞ?」


そう先生が述べたのだ

まぁ確かに、体育の延長線上みたいな球技大会でもいろいろ仕事はあるんだろう

私が、俺が、とアピールしてクラスが騒いでいる
それを横目に欠伸を漏らしていると七瀬がこちらを向き、にこりと王子様スマイルを浮かべた


「それじゃあ、佐藤君にお願いします」


「「えーっ!?」」


その発言のおかげで俺は女子に睨み付けられ、大ブーイング

そして俺の有無も聞かずに先生は少し嬉しそうに紙に何かを書いている
多分俺の名前だろう

きっと先生は仕事を穏便に済ませてくれそうな奴だったから嬉しいんだろう


女子を選んだり下手な男子を選ぶと仕事なんかほっぽりだして七瀬にアピールし出すからだ

女子は七瀬と仲良くなりたくて
男子は七瀬と仲良くしてると女の子とお近付きになれるからだ

まぁ、何人かは七瀬と純粋に仲がいいだろうけど

人気があるのも大変そうだな…俺には全くの無縁だからその大変さは一生分からないが


そう考えながらぼーっと七瀬の笑みを見つめる

俺はこんな王子様な七瀬にちょっとひき目を感じながら、一クラスメートとして仲良くなりたい

うん、爽やかに「佐藤君」って呼ばれたい



面倒事を押し付けられている事から目を背け
ぼーっと見つめてるだけなのに真っ赤になってる七瀬からも目を背け、そんな現実逃避に明け暮れていた









まぁ、だけど現実に帰って来なくちゃいけない訳で

放課後になれば残らされてしまった


「倉庫からゼッケンとか必要な分持ってきてくれ。鍵は後でここな?」


「分かりました。佐藤君、行こっか」


「あぁ、うん。失礼しました」


うん、やっぱりいいな
にっこり笑いながら「佐藤君」って呼ばれるの

七瀬は廊下ですれ違い挨拶をしてくる人達に嫌な顔せず挨拶を返している

本当、流石王子様

今日はもう、いやずっとそのままでいてくれ

俺の記憶にある変態七瀬は跡形もなく忘れてやるから
俺が見た幻ってことにしておくから


淡い期待を抱きながら一緒に倉庫に向かい、お目当てのゼッケンや鉢巻きを探すが中々見つからない

先生よ、もっと詳しく教えといてくれよ
…それさえ面倒臭がりそうな先生だけど


「七瀬ー、ゼッケン合ったか?」


…返答がない

ぐるりと部屋を見渡せば…七瀬が真後ろに立っていてちょっとびびった


「…何してんの?」


「優斗に抱き付きたいのを必死で我慢してるの。この前の事ちゃんと反省してるから…」


「…うん、ゼッケン探さない?」


「探したら抱き付いていい?」


「探さないと俺今すぐ帰るよ」


「うー…あーっ、2人っきりなのに恥ずかしがらなくてもいいんだよ?そんな優斗も好きだけどっ」


……誰かさっきの七瀬を返してくれ

俺は倉庫の鍵と一緒に変態七瀬の鍵も開けてしまったんだろうか


全く、俺が必死に探してるのにこいつは…


「七瀬」


「勝がいい」


「学級委員で仕事が大変なのは分かる。だから手伝うのはクラスメートとして当然だと俺は思う。だから手伝うけど、七瀬もちゃんと仕事して。でないと俺ただ面倒事押し付けられた馬鹿になるだろ」


「優斗…うん、そうだね。ごめんなさい…いちゃつくのは後にする」


…そんな後はやってこないけど
分かってくれたようで直ぐに探し始めた

さてと、俺も探さないとな
そして早く帰ろう
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