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□機械越しの声
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side―麗希(れいき)


僕には好きな人がいる

その子はとっても可憐で、運動神経も頭も良い
自分の意見を持ちそれをはっきり述べ、他人の意見もしっかりと傾聴する
家柄は普通だが実に僕に相応しい女の子だ


その子は同じ部活のメンバーでもある

大概の女は僕に言い寄ってくるが彼女は違った

周りのようにいい子ぶったり物を押しつけてきたりもしない


まるで僕に興味がないように振る舞う

あぁ、でも大丈夫
時折合う視線だけで僕の事を好いてるのを知っているから

その奥ゆかしい姿にますます惚れてしまう


だがあまりにもモテてしまう僕は彼女に近付けないでいた

軽々しく近付けば周りの取り巻き達が彼女に嫌がらせしてしまうのだ

昔一度声を「一緒に帰らない?」と掛けてみたが、それっきり
早い段階で嫌がらせされている事を知ったので、すぐに彼女との接触は避けた


だけどやはり物足りず、盗撮は勿論のこと、彼女の部屋に盗聴器を仕掛けた


そんな事いつしたかって?
たまたま部活の展示発表の日が迫っていて、このペースだと間に合わないって時

僕を含む何人かで作業しなくちゃいけなくてね
その時に「私の家で良ければ」って

結構な人数だったからみんな家に来られるのを嫌がっていたのに、彼女はそれを分かった上で名乗り出てくれたんだ

本当にいい子だ

僕の家は方が広いけど、彼女以外を上げるつもりはなかったから名乗り出なかったけど、それがこんなチャンスになるとは

お手洗いを借りると言って、彼女の部屋を探したんだ


部屋は2つあり、一つは酷く散らかった部屋だった

もう一つの部屋は女の子らしくはなかったが、綺麗でシンプルな部屋だった

きっと彼女の部屋はこっちだろう


物影に盗聴器を仕掛け僕は早々とみんなの元へ戻った

その後勿論ちゃんと制作物も作り上げたよ



何気ない顔して帰り、それから夜はこの盗聴器から聞こえる声を毎日聞いていた

彼女の独り言や足音を聞いてるだけでも身近に感じられ満たされた


本当は君の側にいてあげたいのに、君にも我慢させてごめんよ
卒業まで後数ヶ月、我慢していれくれ


そう少し黄昏
今夜も自分を慰めようとしていれば、僕の嫌いな奴の声が耳に入った


「ちょっと、また勝手に掃除したでしょ」


「ご、ごめん…貸してた漫画友達が読みたいって言ってきて…中々見つからなくて」


「言ってくれたら返すよ、もう勝手に部屋掃除しないで」


彼女と似た声なのにこの傲慢な態度

彼女の弟だ

あの汚い部屋を掃除してくれたのに礼の一つもない
何て我が儘なんだ

ノックも無しに押し入り毎回こんな態度だ


彼女に弟がいると知ったのは盗聴器を仕掛けてからだった

調べで見れば彼は同じ高校の一年で、顔も平凡過ぎてちっとも彼女に似ていなかった
クラスメートとの交友もあまりなく、内気な奴
なのに家ではこの態度だ

少しは彼女を見習えばいいものを


彼のせいで苛立ってしまい、すっかり萎えてしまった

全く、いい迷惑

ヘッドホンを外して眠ろうとした時、変な音が聞こえてきた

それが気になりヘッドホンを戻し、その音に集中してみると


「ん…んん…っ、はぁ…」


まさかと思った

音量を上げて目を閉じてよく集中してみると…


「んん…っ、あ…ぁ…」


あの彼女が自慰をするなんて意外だったが、きっと僕を思いながらしてるに違いない

そう思うと本当に愛おしくて

あぁ、そんなに声を我慢して恥ずかしがらなくても、僕も今一緒にしているからね


「い…く…っ、んんっ」


一際甲高い声が聞こえた後、彼女は静かになってしまった

寝てしまったのかな

イった後に寝てしまうなんて何て可愛いんだ


その夜は酷く興奮してしまい、いろいろな妄想をかき立てながら耳に残る声を思い出し自分を慰め続けた


いつか、近い内にこれを全部君の中に出してあげるからね

そう思いながら丸めたティッシュをごみ箱へと捨てた
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