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□変わる景色
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俺には3つ年下の弟がいる
いや、この間出来たのだ

両親の再婚
俺はもう大学生だったし、ここまで育ててくれた母には感謝している
だからその母が好きになった相手なら、極力応援しようと思っていた

初めて義父になる人と顔を合わせた時
お互い緊張していたものの、彼は誠実で母を良く思ってくれてるのもひしひしと伝わった
しかも結構な男前
母もよくこんな素敵な人を捕まえてきたものだ

それから何度か家にも遊びに来てくれ、まだまだ慣れはしないが上手くはやっていけそうだった

何度か会ってから、彼にも高校生の息子がいると聞かされたが、こんな素敵な人の息子ならさぞかし格好いいんだろうな、って呑気に想像していた
「早く義弟に会いたいです」なんて言ったら安心したのか嬉しそうに彼は頬を緩めた

だが会わせてもらう機会はなかった
義弟も忙しいのだろう

それから二人は再婚だからか式はあげなかった
俺達は荷物を纏めて小さなアパートを出た
そんなに大きくはないが、真新しい家の扉を開ける

母を溺愛している義父が買ったのだとか
本当にいい人と結婚出来たんだなぁとしみじみ感じる

初めて与えられた一人部屋
そこに持ってきた荷物を整理していく
まぁ荷物と言っても服や教科書、ゲーム類ばかりだけど

だからすぐ荷解きも済んでしまい、何か手伝おうかと扉を開ければ見知らぬ人と目が合った

その人は俺の隣の部屋の扉を開こうとしていた

義父の面影がある、爽やかな青年
身長なんかも俺より上で、少し見上げなければならない

あぁ、この子が義弟か
やっと会えたので俺は頬を緩めながら手を前に出した


「初めまして、透(とおる)です。宜しくな?」


「…………美味しそ」


聞き間違いだろうか
首を傾げながら見上げていれば、握手する為に差し出していた手に雫が落ちた
何だろ、と思って手から上へと視線をやれば、義弟から落ちた物だった

とりあえず握り返される事のない手を下げる


「えっと、お腹空いてるのか?」


「お兄さん、小さい頃の写真とかない?」


「あると、思うけど…」


どうも話が噛み合ってない…
でもこれから長い付き合いになるだろうからなるべく仲良くしたい
せっかくお兄さんって呼んでくれたし

目を輝かせ見たい見たいとせがむ義弟に「ちょっと待って」と伝えて、部屋に戻ってアルバムを探す
どうやら義弟も着いて来てたみたいで、アルバムを見つけて適当に開いて見せた

よく分からないがうっとりと幸せそうにページを捲っていく義弟
「これ貸して?」と言われ、特に断る理由が無かったの頷けば、そそくさと部屋へ戻っていってしまった


………何だったんだろうか
結局名前も聞けていない
まぁでも嫌われていないだけいいだろう
分かり合っていく時間はこれからいくらだってあるだろうし

そう楽観的に自分を納得させ、両親の荷解きの手伝いにリビングへと向かった
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