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□変態に好かれた結果
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「はぁ…ホントに可愛い」
うっとりと写真を見ながら零す水瀬(みなせ)
その写真に写っているのは3人組の女の子
この女の子達は地方のスーパーマーケットの広告と言う小さな、本当に小さなモデル
メディアに乗るのは広告ぐらいで、新作の服を見に纏って販売促進するのがお仕事
正装は制服みたいな服にそのスーパーのエプロンを着ている、学生アルバイトのような格好
日曜日何かはその姿でレジをやったりお客様の服をコーディネートしてみたり、割と身近存在なのだ
だから地域の人には結構好かれていて、水瀬がその子達を好きでも何ら問題はないのだが
この、いつもの次の発言に問題がある
「あー可愛いなぁー…この子男の子だったらいいのに」
「気持ち悪いこと言うな」
「でもこの子なら女の子でもいい。あーもうホントに抱きたい」
「…この変態」
そう、水瀬は男子校色にすっかり染まった思春期真っ盛りの馬鹿なのだ
いや馬鹿って言ったのは俺の偏見
憎たらしいことに水瀬は頭も賢くて顔もイケメン
しかも寄ってくる男と簡単に寝るのだ
俺からしてみれば馬鹿以外の何者でもない
こんな奴に抱いてほしがる奴らも馬鹿だと思ってる
今はいい、いや良くはないけどさ
卒業してから後悔するぞ
男に抱かれたステータスなんてどうするんだ、黒歴史ってやつになるぞ絶対
「ルノアちゃんに会った事ないからそんな事言うんだってー。一回でいいから本人見てみてよ、ムラムラっとくるよ?」
「はぁ…もう喋んな」
…憂鬱にしかならない
生憎水瀬はお隣さんってやつ
腐れ縁、高校まで一緒になった
でも最近思う
もうこんな話を聞くくらいなら一人ぼっちでいる方がマシだ
その理由は2つ
1つは、これは前からだけど、水瀬が男子校色に染まった辺りから軽蔑してる
見るほど嫌ってまで同性愛に軽蔑はない、純粋にお互いを思ってるならいいとは思う
こう思うだけで俺も染まりつつあるのかもしれないけど
ただ水瀬は変態のタラシでしかない
昔っから水瀬の周りに人が耐える事はなかった
あまりにもモテるから母親も見かねてゆっくり勉強出来るようにと男子校に入れたのに、この順応性と言うか天性の才能と言うか
「男の方がいろいろ楽でいいじゃん?俺男の方が好きかも」
何て言って恋に不純に謳歌してやがる
これが1つ目の理由
もう1つの理由は水瀬が好いてるルノアに問題がある
残念な事に…ルノアは俺だ
きっかけは些細な事
母親が勝手にスーパーマーケットのモデルの募集に投稿したのだ
しかも女の子と偽って
男の募集枠もあったのにこっちの方がまだ可能性があるとか言って
息子を何だと思ってるんだ
俺が知ったのは書類審査が受かった時だ
もう母親は喜んで止められず、バッチリ化粧させられ面接に送り出された
女の格好してるだけで羞恥心が凄くて、ついでに泣きそうで
おどおどとしかしてなかったのにまさかの合格
理由はバランスだとかで
3人組なので1人は元気で活発な子
もう1人は大人な感じの落ち着いた子
もう1人が内気で常に半泣きな俺って訳
受かってしまったからには、それなりに頑張って今までやってきている
そんなルノアをうっとりと見つめ抱きたい発言してる変態と一緒にいたくない
これが2つ目の理由
まぁ俺はずっとこんな態度だし、水瀬も気まぐれで俺に話し掛けてるだけだから聞き流せばいいんだけどな