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□姉ちゃんの代わり
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「お願ごほっ…うっ、ごほげほっ」


「い、いや流石に…」


「げほげほっ、大丈夫ごほ…っ」


「と、とりあえず休んでっ」


今日は創立記念日で休み

予定もなく朝寝坊して1日だらけようと思っていれば、今にも死にそうな姉ちゃんに揺すられて起こさたのだ

とりあえず肩を貸して姉ちゃんの部屋まで連れて行き、寝かせるも腕を離されず、話を聞いてあげ…ひとまず頷けばようやく大人しく眠ってくれた


「母さん、姉ちゃんが…」


「謙(ゆずる)は今日休みでしょ?早く着替えて?」


「えっ?まさか姉ちゃんの話を本気で…」


「体調悪い振りして大人しくしとけば大丈夫よ」


「…冗談だよね?」


姉ちゃんの話と言うのは俺が姉ちゃんの制服を着て学校へ行く、と言うもので…

姉ちゃんは私立の女子校で今まで無遅刻無欠席
成績も優秀で休めば内申に響くから、とあんな状態で行こうとしたのを母さんに止められたみたい

だから母さんも話は知っており、今俺に姉ちゃんの制服を着せられ母さんが持っていたカツラも被せられていく

俺と姉ちゃんは3歳離れていて、姉ちゃんは高校3年
俺は中学3年だ


成長期がまだきていない俺は姉と同じような体系、いや姉ちゃんの方が少し身長が高いくらいだ

受験生だからって必死なのは分かるけど…流石にこれは無茶で…


「あら、駄目元で着せてみたけどこれなら大丈夫ね」


いやいやどこが大丈夫なのっ

…ってツッコミたかったんだけど、鏡の中にいるのは姉ちゃんで…流石兄弟と言うか何か情けなくなってきた


「何かあっても知らないからね…」


どこか楽しそうな母さんと起きてきた死にかけの姉ちゃんに頼まれて断れなくなってしまい…重い足取りで女子校へと登校した




「おっはよーっ」


「お、おはよう」


元気よく挨拶され思わずびくりと肩を揺らしてしまった

慌てて笑顔を作りながら少し声を高くして相手を見つめ挨拶を返す


「柚菜(ゆずな)は今日カラオケ行く?」


「今日はちょっと…体調悪くて」


「そっかー…無理しないでね」


「うん、ありがとう」


この人は確か姉ちゃんの友達だ
…何の疑いもなく姉ちゃんだと思われてほっとした反面、何故か泣きたくなった


その人に着いて行き、教室に行けば女の子ばかりで…ってそれが当たり前なんだけど、普通の中学に通ってる俺にはもう別世界だ



普通の男子なら喜ぶシチュエーションっぽいが、格好が格好だし人見知りであまり女の子と関わった事のない俺には緊張を高めるだけだった





そんな中授業さえ始まってしまえば特に問題もなく、昼休みを迎えれた
机の上に持たされたお弁当を広げると、何人か姉ちゃんの友達が集まってきた


「ねぇねぇ柚菜」


「なに?」


「何か今日の柚菜可愛くない?」


「あ、それ私も思った」


ま、不味い…顔をまじまじと見られてるっ

苦笑いを浮かべながら不自然じゃない程度に俯く…


「何か幼いって言うか」


「そ、そう?…わぁっ」


俯き周りが見えにくくなっていれば後ろから抱き付かれ、可愛くない悲鳴を上げてしまった


「ゆーずーなー」


「風邪うつっちゃうから…っ」


うあぁ…っ、近いっ
と言うか恥ずかしいっ!


「本当だ、顔赤いよ?」


至近距離で微笑まれ頬をつつかれれば頬の熱は上がる一方で…


「ほ、保健室行ってくるね」


緊張感もあり食欲もなかった為、乱暴に鞄に弁当をしまえば逃げる用に教室を後にした


朝に確認した時間割りだと次は体育なのでちょうど良かった


えぇっと保健室…保健室はどこだ?


気のせいかな…何か物凄く視線を感じる…は、早く保健室行かないとっ



角を曲がった所に「保健室」と言う文字が見え早足で向かった


コンコン


「どうした?」


「た、体調悪くて…一時間でいいので休ませてもらえませんか?」

ノックしてから扉を開けば、この人が先生かよってくらい怖いお人が…しかも睨まれた


「その奥で休め」


「ありがとうございます」


すぐに視線を外しややびくつきながら話せばぶっきらぼうに言われ、頭を下げれば大人しくベットに入った


よ、よくこんな人が女子校の、しかも保健医やってられるな…男の俺でも怖かったのに人来るのかな…


まぁ…とりあえず今は休ませてもらおう

そう思い目を閉じて俺は眠った






「…今日は静かなんだな、本当に体調悪いのか」


何か人の声が…あれ…ここどこだっけ…?

まだ瞼は重いので開かずぼんやりとしていれば、何かがおでこに触れた


「熱は無いな」


意識もしっかりしてきたので目を開けば…あの怖い保健医さんが…っ

しかしまだ寝ぼけていて、見つめられていたので見つめ返してよく見ればこの保健医さん凄くイケメンだった
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