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□運命の悪戯
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成長と言う物は目まぐるしいものである



クラス、いや学校中から、たまに他校からも人気があり毎日毎日キャーキャーと言われている人物がいる

七瀬 勝(ななせ すぐる)

茶髪が良く似合い女の子曰わく「甘い顔をしていて、笑顔はまるで王子様」らしい


これを聞いた時は流石に笑いが堪えられず、机に突っ伏して耐えたっけなぁ…


それは何故かって言うと俺の記憶の中、小学校の頃の七瀬はとても大人しかったのだ


しかも余り友達もおらず、女っぽい顔からからかわれている事も良くあった

まぁ友達が少なかったのは俺も一緒だけどな


たまたまからかわれてる現場に居合わせ、何も言い返さず泣き出していた七瀬を見つけた時だ


「七瀬は格好いいんだよ!からかってるお前らの方がよっぽど不細工だぞ!」


とまぁ我慢出来ずに事実を言ったら「お前も不細工だろ!」って言われたんだけどな…知ってるわい


「性格も不細工だって言ってるんだ!」って胸張って言い返してやったらめんどくさくなったのか、からかってた奴らはあっかんべをして去っていった


振り返れば七瀬がきらきらとした目で見てきたんだが
「七瀬も泣いてないで嫌なら嫌って言え!」って何か説教口調で言ったんだっけ…掛ける言葉を間違えたようで泣かれてしまったから記憶に残っている


それからもからかわれていれば止めに入り、七瀬にも叱っていれば、いつの間にかからかう奴はいなくなっていった


そして七瀬は親の仕事とかで転校していき、特に仲良くなる事もなかった

高校になって再会を果たしたので俺はびっくりしたが、七瀬は覚えてないようで同じクラスだが未だに話した事がない


あの泣き虫の大人しかった七瀬が今や王子様だもんな

かく言う俺は別に何の成長もなく、ただ運動とかしなかったので身長は平均以下で止まってしまったくらいだ




授業中に昔の事を思い出していたせいでぼーっとしてしまい、教師に放課後残るように言われてしまった…


「おう、いやー悪いな。これ頼むわ」


軽々しく言われて渡された物は大量の印刷された紙とホッチキスだった


授業中ぼーっとしてた罰って普通プリントとかじゃないのか、何だこの雑用は


そう言いたかったがまだまだありそうな紙の束に恐れて黙って紙を抱えて教室に戻って作業を始めた



カチャンカチャンと紙の束をホッチキスで留める
留めながら今日の晩ご飯は何かなぁとか考えていたらバンっと大きな音をたてて扉が開かれた


「さ、佐藤優斗!(さとうゆうと)」



「は、はい?」


いきなりフルネームを、しかも大声で言うからホッチキスの止め方をミスった 許せ先生、俺のせいじゃない


「しょ、小学校の時一緒だった!」


「あぁ、覚えてたのか。久しぶり」


何やら興奮気味の七瀬を余所に軽く返事をすれば俺は作業を続ける

でないとこの紙の束が減らないのだ


「か、顔っ…普通過ぎて分からなかったじゃんか!」


……普通で悪かったな
しかもなぜ怒られにゃならんのだ


「会いたかったー!もうこれ運命だよね奇跡だよね!?」


会いたかったのなら…運命とか言うなら俺の顔忘れてるなよ

何かもうテンションに付いていけなくて何もかもスルーしていた


「優斗ーっ」


「な、何だよ しかも呼び捨てにするなよ」


「冷たい優斗も大好き!もっと罵って?」


「……はぁ?」


名前を呼ばれ作業していた手を握られれば流石にスルーは出来ず…何て言ったコイツ

聞き間違いか…?


「…作業出来ないから離して」



「はーいっ」


握られていた手はあっさりと離され、俺は作業に戻ったのだが…しゃがみ込まれじーっと見つめられた


「やりずらい、見るな 離れて」


「う…っ、こんなに大好きな優斗がやっと傍にいるのに!でも優斗が言うなら聞くねっ」


ちょっと冷たく言い過ぎたかと思ったが、なぜか息を荒くさせニコニコと微笑んでいる…正直怖い

…七瀬ってこんなキャラだったっけ?
女子がキャーキャー言ってた「王子様スマイル」
今はただの変態にしか見えないんだけど…


とにかく作業を終わらせよう

そう思って進めるも俺から離れた入り口近くからちらちらと視線を感じる


「…七瀬、何か用事あったんじゃないの?」


「七瀬じゃなくて勝って呼んで?あ、もしかして恥ずかしい?」


たまらず声を掛けたんだけど会話にならない…もういいや、夢なんだろうこれは

構うのを止めれば一人で話始めた


「放課後ね、なーんか懐かしい匂いがしてさ 振り返ったら見覚えのある後ろ姿だったから女の子達をほって後を追ったんだ!」


え、俺何か匂うの?
くんくんと袖を嗅いでみたが分からず…「僕も嗅ぎたいっ」て叫ばれたから気にするのを止めた
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