ブック
□ifリアンちゃん
sideー山坂
「今期の一番はやっぱりあの妖怪アニメだよなー」
「はいはい、そろそろ現実に戻ってこい。テスト対策始めないと妖怪より怖いお母さんに怒られるぞ」
ひぇ、っと悲鳴を上げる友達に苦笑いが出てくる。…友達のお母さん、本当に怖いもんね。
放課後に勉強しよっか、なんて話し合いながら空き教室でゆったりとした昼休みを過ごす。
普通な日常、前の日常に戻っていた
津坂先輩は、あれ以来誘いに来ていない。
…別に津坂先輩が悪い訳じゃないんだけど、なんとなく埋めにくい距離感が出来てしまっていた。
それでも、すれ違えば会釈ぐらいはしてる。リアンちゃんの時も同じく手を振ったり頭を下げたり。
一生徒と生徒会長。知り合いや友達と言うよりその言葉が一番しっくりきていた。
ーーー
「山坂君お疲れ様。何か学校とか、それ以外でも困ってることはないかい?」
更衣室にいた店長さんに深く頭を下げる。
着ぐるみを着てる癖で、手を振ったり大きく首を横に振り”何事も無い”とジェスチャーを送ってしまう。
それを咎める事もなく、穏やかな笑顔を向けてくれた。
「そう言えばそろそろテストとかあるんじゃないのかな?あれなら休憩中とかここで勉強してくれてもいいからね、少しくらいは教えられるかもしれないしさ」
わたわたとジェスチャーを送るも、ふと気が付き慌てて頭の被り物を外した。
「お、お疲れ様です。そんな、悪いですから…」
「まぁまぁ、僕も高校生の勉強がどんなのだったか思い出したいんだ。ちょっとだけでいいんだ、付き合わせてはくれないかな?」
「えっと…それじゃ、店長の都合の良い時間にお願いします。すみません…」
「ありがとう、楽しみにしてるよ」
へこへこと頭を下げながら店内に戻る店長さんを見送る。
…あの時に、随分心配してくれて辞めてもいいって言ってくれたけど、せっかく店長さんが褒めてくれたから。
津坂先輩も、ファンでいてくれるって言ってくれたし。…中身が俺じゃなくてもいいかもしれないけど。
とにかく、一人でも俺のリアンちゃんを好きでいてくれる人がいるなら、頑張ろうかなって。
全部が全部楽しい訳じゃないけど、やっぱり俺もリアンちゃんが好きなんだと思う。…俺のせいで随分リアンちゃんに苦労させちゃったけど。
「ごめんね。もう暫く…よろしく」
そんな独り言を呟きながら、リアンちゃんの頬についていた汚れを払ったのだった。
→次へ
[表紙へ戻る]
ゲームブックを検索