ぶっく

□可愛い俺のお嫁さん
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sideーいぶき


「風呂ありがとな。今度先に入ってなかったら一緒に入るから」


「た、大希…っ」


あぁもう…大希が格好良くて可愛くて…好きって叫びたくなっちゃう…っ
明日も絶対お風呂入らないで待ってるっ

何で大希と結婚するのって、親からも周りからも随分言われたけど…俺には大希しかいないの
出会った最初から大希は俺の王子様で…お姫様でもあるんだけど

俺は早くに父親を亡くして母親と二人で暮らしてきた
母親の事は大好きだったんだけど…再婚すると言って連れて来た人が気に入らなくて
その人よりその息子…義理の弟になる子と馬が合わなくて…
広い家に引っ越されてもてはやされて…それがまるで他人だと言われてるみたいで嫌でたまらなかった
それでもここまで育ててくれた母親の選んだ人
上辺だけでも仲良くしようとしていた矢先…最悪な事に弟に襲われかけてしまって…未遂で済んだからよかったんだけど、もう顔を見るのさえ怖い
それがあって家を出させたがらなかった親も渋々頷き、家を出る事が出来たんだけど…弟の姿が頭によぎり、男を見るのが怖くて仕事に手がつかなくなってしまったのだ

父親を早くに亡くしたけど、楽しかった思い出は少しだけある
だから俺の夢は家族みんなで笑顔で過ごす事、もう一度だけでいいから過ごしてみたかった
なのにこんな事になってしまって…俺の夢も居場所も無くなろうとしていた時に出会ったのが大希で

ろくにご飯も食べてなくて倒れてた所を助けてもらって、今までの事を全部打ち明けても嫌がらずに適度な距離を保って接してくれて、それから…


”いぶきの居場所は他にもあるだろ。…家族だって、今から作ればいい”


「俺がいぶきを笑顔にしてやる…か」


何度思い出しても格好良くてたまらない…っ
照れ臭そうに差し出された手を掴んで、今に至るのです

大希の事は男だと思ってたけど、それでも結婚はするつもりだった
でも実は牝で…だからあの時思いを全部打ち明けれて、側にいても怖くなかったのかって納得が出来た
それに牝だと分かれば急にそんな目で見てしまうようになって…性欲って言うより好きだからもっと、みたいな…
もちろん子供だってほしい。そんな我が儘ばかり次から次へと出てきてしまう
でも大希はちゃんと分かってくれて…交わる時の大希はめちゃくちゃ可愛らしくて、益々惚れてしまった


もう好き過ぎて自分が抑えきれないほど、大希を溺愛している

だから…だから、こんな事してるって分かったら嫌われちゃうかもしれない…
でも我慢しなきゃって思えば思うほど、このすれ違いが我慢出来なくて…
好き過ぎて欲求を止めることが出来なかった




「大希…」


「ん…ごめん。明日早く出ないといけないから」


一緒のベッドに入り抱き着いてみるも、キスはくれるけどそれ以上はない…
大希が体を開いてくれるのは月に二〜三回程度
随分な恥ずかしがり屋で、お休みの日に迫ってなんとかって感じ
でもそんなのじゃ我慢出来なくて…


「んん…っ、いぶき…?」


「大希…好き、大好き」


薬と水を口に含み、大希に口移せば無理矢理飲ませる
飲んだのを確認すればそのまま舌を絡めるキスを続け、体に手を這わせていく


”子供が欲しいのは俺だって一緒だ。…けど周りの目があるし、今は仕事を頑張りたいんだ。だからー”


分かってほしい、そう言われて頷いた癖に、俺は何一つ分かってなかった
男だと思われてる職場でお腹が膨らむ姿を見せたくないとか、理解は出来ても心が受け止めれなかった
好き合ってるんだから、大希だって同じ気持ちだと思ってたのに…


「駄目だって…いぶき…んんっ」


首筋に付けたいのを何とか我慢して鎖骨や胸に吸い付いて跡を残していく
俺のだって印…付けても付けても足りない…
子供だって、目に見えた愛の形が欲しいから
離れられない理由が一つでも欲しいから
そんな事を考えてるなんて、きっと大希は知らない

駄々をこねてみて避妊具を付けるのが嫌と言えば避妊薬を買ってきた大希
それだけ本気で子供が欲しくないんだって言われたみたいで堪らなく寂しかった


「はぁ…ん、う…」


「大希…いい?」


「言わせるな…くっ、はあっ」


真っ赤な顔を背けて声を我慢する姿が可愛くて仕方ない…
ダメって言うけど抵抗はなく、推し進めれば優しい大希は俺を受け止めてくれる
こんな表情や姿を見るのは俺だけ…そう分かっていても満足が出来ない


「大希…大希…」


「んんっ、いぶき…ごめん」


激しく突けば首に手を回され引き寄せられ、深い口付けをくれる大希
何にたいしての謝罪なのか、やっぱり子供を作らせてくれない謝罪なのかな…

そう思えばまた寂しくなってしまい、腰を掴めば乱暴に、この寂しさを紛らわすように突く

周りの目が心配ならもういっそ大希がお嫁さんになってくれればいい
俺だって大希のおかげで男性が怖いのもマシになったし、美容師だから殆どのお客が牝か女
今みたいな日に二、三時間じゃなくてフルで入れば養っていけるのに…
一度相談してみたけど、首を縦には振ってくれなかった


ねぇ、どうしてなの大希…大希は俺の事好きなんだよね…?
外に出なきゃいけない理由が、子供を作れない事情が何かあるの?


「あ、く…っ、いぶき…っ」


ぴりりと大希が爪を立てた背が痛むのを感じ、不安ながらにそれさえ愛おしく
最奥で果てれば、こんな事止めなきゃと思う自分と、どこか満足している自分がいて

子供が早く出来てしまえばって、大気に飲ませた唯の”栄養剤”が少しでも効けばいいのにって

疲れて眠ってしまった大希のお腹を撫でながらそう思わずにはいられなかった



sideーいぶきend
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