ブック2

□情けは人の為ならず
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「あ…あぁっ、気持ちいい…っ」


「あぁんっ、イっちゃう…っ」


淫らに腰を揺らしながら善がるのは顔が同じな双子
反応もイくタイミングも同じ
それが見ていて堪らなく興奮してくるが、それと同時に癒されると言うか和み微笑ましくなってくる

俺は別にホモでもなければバイでもなく、そもそも色恋沙汰には疎く社会人なのに未だに童貞なまま
それでも一応性欲はあるので、久々にAVでも買おうと思って先日店に立ち寄ったのだ
本当に、疎い俺にはどのパッケージも同じに見え、特にこれといった物が見つからなかった

その時たまたま目についたのが今見ているこのDVD
安っぽい煽り文句が綴られて、もうちょっとした好奇心からだった
男も女も関係ないんじゃないかって、むしろどこにでもいそうな顔が逆に見てみたさを煽った

面白半分だったはずが、その可愛さにどハマりしてしまい…この子達のAVを全て買ってしまったのだ
強姦物からその逆まで、どれを何度見ても飽きる事はなかった

俺もこの子達を襲ったり襲われたいしたいなぁ…と願望はあったけど、それは願望だけで
実行する気は毛頭なく、その辺の男と付き合う気も湧かず
もうこの二人にめろめろで女と付き合いたい願望まで薄まり、益々恋愛事に疎くなり…縁もない生活を送っていった

しかもこの子達結構な人気で…一目会おうと握手会に参加しようにも、いつも抽選から漏れてしまっていたのだ


そんな時に、だ


「いや〜朝から雨が降ってきてびっくりしちゃいました」


「雨じゃなくて雨漏り…あれ、でも雨じゃないし…何て言うんだろ」


…画面越しだった二人が今目の前に
俺は思春期の乙女か、と自分でツッコミたくなるくらい…二人の顔が見れない
ドキドキもしっぱなしで心臓が痛い…でも二人の和やかさに心は柔らぐ


「水漏れ…でいいと思うけど、大丈夫だった?ごめんね」


「謝らないで下さいよ、あの人にも散々謝られたし、ね?」


「うん、全然大丈夫ですよー。むしろちょっと楽しかったり」


「こら、楽しんじゃダメだよ。ご迷惑かけるんだから」


「えへへ、ごめんなさい」


「い、いいよいいよ、短い間だけど楽しい方がいいもんね…っ」


…あぁ、ダメだ。可愛過ぎて死にそう…動悸速すぎて心臓が痛みっぱなしだ

空き部屋へと案内し、少ない彼らの荷物を運び入れ今一息ついた所
一緒にコーヒーを飲みながら、同じ量のミルクと砂糖を入れる姿にスローテンポなこの会話

…赤面するばかりか吃りっぱなして格好悪い姿ばかり晒しているが、もういっぱいいっぱい過ぎてどうしようもなかった


「あ、僕らお世話になってる間は家事とか全部やりますので」


「有難いけど、気にしなくていいよ?いつでも何でも使ってくれてもいいけど」


ふと顔を上げて思い付いた様に話したのは弟の方、だと思う


「ボク達のお仕事、週に一回あるかないかで暇なので」


「愛羅さんが嫌と言うならしませんが…」


「ボク達結構家事得意なんですよ〜?美味しいご飯作っちゃいますよ?食べてみたくないですか?」


笑顔が絶えずコーヒーを飲みながら足をぶらぶらさせてるのがお兄ちゃん、かな
見た目はそっくりだけど、雰囲気が少し違う。喋ればもっと分かりやすい
…それを彼らの”お仕事”の様子を何度も見たから、とは絶対言えないけど


「い、いの、かな?嬉しいし是非食べてみたいけど…俺何も礼とか出来ないよ?」


「住ませてくれるし、ね?」


「うん、それに楽しい方がいいって言ったの愛羅さんでしょ?みーんなで食べた方が美味しいですよ〜」


「ありがとう、じゃーお言葉に甘えるよ」


「わーい、もう今すぐ作っちゃいますね?」


「僕ら朝から食べてなくて…台所借りてもいいですか?」


「いいよ、遠慮もしないで?それに敬語もなくていいから」


「ありがとー。えへ、いい人で良かった。あ、ボクは叶人(かなと)」


「僕が叶夢(かなむ)、改めてよろしくね」


「こちらこそ、宜しく」


DVDでは知れなかった本名を知れて一人心の中でガッツポーズをしながら、表には出さないように自然と握手を交わす

ホント、そんな仕事してるとは思えない程可愛い子達なのに
…またそのギャップがなんとも言えないんだけどさ

自分ちの台所で下品さを一切出さず料理をする二人がもう夢のようで、感動で泣きそうになってしまう
まただらしなく頬が緩んでしまいながら、可愛いエプロンでも着せてあげたいと…その、変な意味抜きで思ってしまった
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