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□姉ちゃんの代わり
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「あ、あの…」
「本当に佐伯(さえき)か?」
いつまでも見られていたのでたまらず声を掛ければ、恐ろしい事を尋ねられた
ね、寝たふりでもしとけば良かったっ
今からでも寝たふりをしようかと思っていたら…何やら保健医さんがベットに上がって俺の上へと跨がって…何この状況
「……生徒には興味なかったんだが」
寝たふりでも寝ぼけている場合でもなく、このままじゃヤバいのだけはわかる
あ、あれか…まさか俺が男だって気付いて殴るとか…っ
「柚菜」
「ん…っ」
ち、違うっ!バレてはないっ
けど耳元で囁かれたら腰がズンっと重くなって…変な声出してしまった…っ
多分今顔が真っ赤なんだろう、保健医さんが大人な笑みを浮かべてて…逃げなきゃ不味い!
「しっ、失礼しました…っ」
目の前の人物を押しのければ声が裏返ってしまうも気にせず保健室から慌てて飛び出す
「逃げられると追いたくなるのにな」
そう聞こえた言葉が幻聴であってほしいと願った
ちょうど授業も終わったようで、廊下にはちらほらと生徒がおり保健医さんが追ってくる事はなかった
走っていれば注目されたので内心ひやひやしながら歩き、何度か振り返りながら皆がいる教室へと戻った
「顔赤いけど大丈夫?」とクラスの子に聞かれ、大丈夫と返事しながら席へとつく
俺も何で顔赤いんだ…普通男にあぁ責められたら青くなるもんじゃ…
そう落ち込むも先生が入ってきたので、授業は分からないもののノートだけは取ろうと授業に集中した
そんな時だ
「佐伯さん」
「はい……わかりません」
「ならこっちはどうですか?」
「わかりません…」
教室がざわつきだして、冷や汗が流れる
先生に当てられてしまったのだ
席を立って問題を見つめるが、中学生の俺が分かる訳もなく…多分簡単なのも分からない俺に周りが驚いているんだろう
「先生ー、柚菜今日体調悪いんですよ」
そんな中姉ちゃんの友達が助け舟を出してくれたのだ
「そうなのですか?」
頷いて返事をするが先生からの疑うような視線はなくならず…
「しかし少し心配なので放課後残って下さい」
「はい…」
…早く帰りたかったのに
助けてをくれた友達に小さな声で礼を言えば、席へとつく
この授業で最後だった為、授業が終われば先生に手招きされたので鞄を掴み、クラスメイトに挨拶をすれば先生の後を着いていった
「これ、解いてもらえますか?」
数学準備室とかかれた部屋に通され、ソファーに座るように促される
一枚のプリントを渡されるがやっぱり全然分からなくて…
「すみません…」
「本当に、体調悪いだけなのですか?」
俯いていれば隣に座られ、香水の匂いが漂う
その匂いにむっとしてしまい座り直そうとすれば肩に手を回されて動けなくなってしまった
「今日の授業中、佐伯さんとはよく目が合いましたし…」
合うって言われても…授業なんだから先生の方を見るのは当たり前で…
いやそれもあるんだけどこの先生は保健医さんとはまた違ったイケメンで…簡単に言えばホストみたいな
「集中出来なかった理由はなんですか?」
「た…体調不良で…」
「なら目を反らさず言って下さい」
「…っ」
目を見るも格好良くて直視出来なくて…2秒で逸らしてしまった
空いている手で俺の手を握り…しかも指を絡まされてしまいまた冷や汗が流れる
「柚菜…僕を見ていたんですよね?」
な、ナルシストかっ
…と実際にツッコむ余裕はないので心でツッコミを入れる
黙って俯いて小さくなっていれば「柚菜」と今度は耳元で甘く囁かれ、びくんと身を震わす
「こ、これ明日までにやって来ますから!」
「あ、待ちなさいっ!」
もうこの雰囲気に耐えきれず、出されていたプリントと自分の鞄を掴めば準備室から飛び出す
幸いもう放課後なので人がおらず、振り返る余裕もなく門まで全力で走って出た