Book(2)KinKiな日々

□王子様の生活
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日々は目まぐるしく回る。
一つ一つが新しく、毎日にときめきがある青春時代はとうに終わりを告げて、気づけば自分も30代。


華々しい世界で生きつつも、その毎日はあまりにも淡々と過ぎて行く。


まだ何も知らない子供の頃に足を踏み入れたこの世界で、どんな偶然が重なりあってか、いつの間にか名前も立場もそれなりのものになってしまった。



あの頃は物珍しさにワクワクしたスタジオも、見る度心を踊らせた初雪も桜も

今は見慣れた風景の一つ。


(……なにもかもが新鮮だったあの頃が懐かしい)


信号待ちの車の中から外を見渡せば、季節は青葉の茂る春。


街にはピカピカのスーツを身に纏った新入社員や少し大きめの真新しい制服を着た新入学生が溢れているのに、俺は何も変わらない。



(これからも何も変わらんのか)



きっと何も変わらない。誰もが羨む輝かしく特殊な世界にいるはずなのに、この物足りなさはなんだろう。






 
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