赤い光。きらりきらりと輝く夕日が照らす教室は、当たり前の事だけど無人だった。
がらんとした空間に妙な孤独感を抱きながら窓際の自分の席へと足を進める。
「…っと、あったあった。」
机の上に置かれた数学の教科書を手にとり、鞄へしまう。
明日の1限目が小テストだっていうのに、すっかり忘れてた。家近くて良かったな。
安堵のため息をつきながら、ふと窓の外へと顔を向ける。
「わ、すごい人…。」
帰宅部の私にとって、運動部でごった返した校庭は新鮮以外の何物でもなく、気がつけば椅子を引き観察を始めていた。
「野球部にテニス部に…走ってるのはバスケ部かな?」
誰に問い掛ける訳でもないのに自然と口に出してしまう言葉をそのままに、私は更に校庭中を見渡した。
「あの子ソフトボール部だったんだ!隣は…。」
…あ。
「サッカー、部。」
ソフトボール部のすぐ隣。白黒のボールを蹴っ飛ばしながら走り回る彼らは紛れも無くサッカー部で。
その事実を認識したまさに次の瞬間、私の瞳は更に彼の姿を捉えていた。
どっくん。
汗と泥に塗れて、髪を振り乱して、懸命に走る、竹谷くん。
いつもの明るい笑顔じゃなくて、真剣で、真顔で、それで…。
「う、わぁ…。かっこいい…。」
かあっと体が熱を帯びるのを感じて、思わず手の平で頬を包んだ。
だって、だって。あんな顔、はじめてみたから。
好きな人の新しい一面を見れて、すごくうれしかったから。
窓を開け、大きく息を吸う。
冬の匂いが鼻孔を擽った。
まばゆい赤に目を細め、肘をつく。
「…忘れ物、してよかったかも。」
…なんて、思ってしまった私は、重症だね。
ふふ、と自然に漏れた笑み。
それでもいいや。
甘酸っぱくて、
(でもやめられない)
ーー
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