短編
□青に追悼
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今思い返しても、ひどく虚しく、そして何とも儚いものだった。
あれが青春だというのなら、余りにもまばゆいその輝きに色褪せてしまったのだとしか、言いようがないだろう。
それほどまでに、強く、弱い記憶なのだから。
「どうかした?」
「いいえ…何でもないわ。」
優しい笑みに、私も一つ、微笑みを返す。
仄かな赤は黒い布地を引き立たせ、私の白を隠してしまいそうだった。
す、と目を伏せれば不安げに気配が揺れる。
それに答えるために私はまた口元に小さく笑みをたたえた。
「幸せに、するから。」
「もう充分幸せなのに?」
ふわりと舞う、花の香に身を寄せる。
温かなその腕は、いつだって優しく私を包んでくれた。
慈愛に満ちたその笑みは、いつだって私を守ってくれた。
これからは、それが永遠へと変わるだけ。
「…本当?」
「もちろんよ。」
「じゃ、これからも、ずっと幸せにするよ。」
「ふふ。本当に、満足なのに。」
本当に、とても、幸せ。
ただ。
ただ、少し。
青く透徹なあの日々を偲んで、
意地悪く笑う、遠い霞みの先の、彼を思い出して、
制服のまま、止まった時へ思いを馳せて、
切なくなった、だけだから。
青に追悼
(放ったブーケに)
(貴方への想いも)
ー
追憶の人は鉢屋。
むしろ表記を鉢屋にするべきだった。