短編
□冬空に、君と
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「よっと。」
「なんだ、三神か。」
「なんだとは何よ失礼ね。」
横目でじとりと睨みつければ肩を竦め直ぐまた視線を上へ戻す三郎。
そこに広がるのは満天の星空。
「寒くないの?」
ほう、と息を吐けば白く染まる空気。瓦から伝わる冷たさが身体の温度を下げて行く。
「寒い。」
鼻を真っ赤にし、膝を抱える三郎。それでも夜空から目を離すことはなかった。
「新年から何やってんだか。」
長屋から漏れる灯と騒々しい笑い声。先生達も新年だからと大目に見てるんだろうけど、さすがに煩い。
そんな中で一人、屋根の上でぼうっと夜空を見上げているものだからついつい私も登って来てしまった。
ちらりと視界の隅で三郎を見遣ってから、私も彼にならって顔を上げる。
ちかちかと瞬き散らばる星々に夜空を彩るような大きな三日月。
思わず感嘆の溜息を零してしまった。
「…綺麗。」
「だろ。」
「何であんたが得意げなのよ。」
「何でだろうな。」
くつりと笑う三郎。
年が明けても変わらないな、なんて心の内でそっと呟いてから私も口角を上げる。
唇から漏れたのは、笑い声。
「今年もよろしくね、三郎。」
「しょうがないからよろしくしてやるよ。」
冬空に、君と