*秘密*

□2つの告白
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ーー二宮君がいるなら、あそこしかない。






放課後、ずんずんと人で溢れる廊下を突き進む


他の子に話しかけられようと「ごめん」を繰り返して歩いた



無心で、ただ行かなきゃって衝動に駆られて向かった



その時、ある人に声をかけられてやっと足が止まった


ゆっくり振り返ると、そこには力の抜けた、でも凜と立つ大野君がいた



「....大野君」


智『今、時間ある?』


「....」




そんな目で私を見ないで


ない、なんて言えないよ....







智『進んでる?文化祭の準備』


「....え、あ....うん、そこそこ」



空き教室に入ると大野君は窓側の席の机に腰かけた


私はどうしたらいいのか分からずに入口に突っ立ってた


ただ、会話を聞かれたくないと思ったのか、反射的に教室のドアは閉めた



大野君はずっと外を眺めてぼーっとしてる


ここからの風景があまりにも絵になっていたので、私もぼーっと見つめてしまった




智『返事、考えてくれた?』


「....あ」




そうだよ、その事に決まってるじゃない



智『....』


「....あの、その....私....」


智『二宮がいい?』


「えっ、」


智『....そんな気がした』


「....」





やめて、そんなに私を見透かしたような目をしないで....




智『....先に手を打ったつもりだったんだけどなあ....遅かったかぁ』


「あ、の....大野君っ」


智『ん?』


「私、大野君のことは好き。いつも真っ直ぐで、強くて、私を気にかけてくれたり、守ってくれたり....大野君は私のヒーローだよ」


智『うん、でもそれは知沙ちゃんのこと好きだからやったんだよ』


「違う。大野君は元々そういう人だよ。私知ってるもん」


智『....知沙ちゃん』


「....そうやって、私に負い目がないように悪い人ぶらないで良い。だって私は知ってるもん、大野君がどれだけいい人なのか」


智『....』


「だから、告白してもらって、正直に嬉しかったよ、本当に。

でもね、今どうしても気になる人がいるの」


智『........うん、知ってる』


「その人のこと、好きなのか分からないけどどうしてもその人の事で頭がいっぱいになっちゃうの。
なにしてるかな、とか。
大丈夫かな、とか。
いらない心配いっぱいしちゃうの」


智『....』


「だから、今大野君と付き合っても、大野君に失礼だと思うの....だから」


智『真面目だなあ、知沙ちゃんは』


「へ?」


智『....それはね、二宮が好きってことだよ?(笑)
それに、知沙ちゃんだって自分の事悪者扱いしてるじゃん』


「....」


智『....失礼なんて言わないでよ。』


「....あ、ごめんなさい....っ」



言葉のあや、というものか"失礼"という単語はたしかに選択ミスな気がした



智『...引き留めてごめんね、行くんでしょ?』


「え?」


智『屋上』


「....」


智『....』


「....うん」




大野君に背を向けて私は教室を出た



廊下に響く上履きの音が消える頃、やっとため息をついた





智『....苦難を選ぶんだね、知沙ちゃん』




ヒーロー、か。


ヒーローはお姫様と結ばれると思ってたんだけどな(笑)

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