テニプリ短編

□夢の続きU
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私は何かに包まれていた。

なんだかよくわからないけど、ほわほわして、とても暖かい何かに包まれていた。

綿でもない、羽根でもない。
もっとしっかり、それでいて暖かくふんわりと私を優しい香りと一緒に包んでくれる。


それが何なのか確かめようとした瞬間、それはふっ、とまるで今まで存在していなかった、蜃気楼のように姿を消した。



気がつけば私は病院のベッドの中。

あれは、夢‥‥‥?





あの夢を見てから3日目、私は昨日と同じくらいの時間に起きて看護士さんが運んできた朝食を食べ、デザインが全く変わらない入院服に着替えてまたベッドの中へ。

それは一週間前、私が入院した日から何一つ変わらない生活だけど、今の私の頭の中はあの日見た夢のことでいっぱいだった。





それは、夢にしてはあまりにもリアルだったから。

第一、夢の中で温かさや感触、匂いを感じるなんてまずないはず。
だけどあの時は確かに、優しい香りや温かさや優しさ、そしてその中に含まれる力強さを感じた。

どう考えたって、あれがただの夢だとは思えないんだ。


「いったい、なんなの‥‥‥」








お昼前の気温が高くなってきた頃、気晴らしにと思って屋上へ行ってみた。

まぁ、少し肌寒い屋上は結局私の体を冷やすだけだったけれど。



「‥‥‥‥‥はぁ‥‥」

病院内でもあまり出歩いていなかった私は疲れるのが早いのか、階段をおりている途中でだんだんフラフラとよたつくようになっていて、



「‥‥‥‥っ、!!」

気がつけば目の前が真っ暗で足が滑ってしまい地についておらず、最終的に感じたのは、どうしようもない浮遊感。





フワ‥‥‥


「‥‥‥‥、え‥?」


視界は元に戻らなくて、そのまま下まで転げ落ちるかと思ったけど痛みが‥‥ない。

それにこの温もり、力強さ、匂い‥‥‥これは



「‥‥‥夢と、同じ‥?」
「‥‥‥夢と、同じ‥?」



「えっ、?」

パッと視界が元に戻って腹部を見てみると、そこには私と同じ、入院服を纏った腕。

反射的に後ろを振り向くと、少しウェーブのかかった藍色のような色の髪をした、私と同じ年齢くらいの青年が、私が落ちないよう、支えてくれていた。

彼も私の言った言葉に目を見開いて驚いた気がしたけれど、すぐに分からなくなった。
それは彼が私の肩にゆっくりと頭を乗せたから。



お互いに名前も知らなければろくに会話をしたこともない。むしろ今の今まで顔さえ知らなかった。

だけど一つだけ、お互いの心の中で確かなことがある。
それは、あの不思議な夢の中で、彼女を包んでいたものが彼で彼が無意識ながら大切に包み込んでいたものが彼女だったということ。



何故かあの夢の中のように離れたくはなくて、むしろすごく大切で、ずっとずっと手放してはいけないもののような気がして
彼は彼女の腰に巻きつけた腕の、彼女は彼の腕を握り締める手の力を強めた。





二人が酔いしれたのは
再び訪れた、優しく暖かい


あの日見た夢の続き









素敵企画サイト
ラストソングス様 提出
ありがとうございました^^



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