VOCALOID
□『易しい愛の形』
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「マスター」
それが
君が云った、一番最初の言葉。
――雨の日
暗い路地裏のゴミ捨て場に置かれた、VOCALOIDのソフトウェア。
青い色
雨に打たれ続ける、小さな箱。
私は“それ”を衝動的に持ち帰った。
家に着いたら、まずパソコンを立ち上げて、使えるかどうかを確認する為に青いソフトウェアを入れる。
10…25…30%とゆっくりインストールをしていく。
鼓動を早め、じっくりと待つ。
90…99、といった所で、ふとパソコンの画面が真っ暗になった。
…停電…?
それはない。だって、部屋の電気は点いてるから。
意味もなく、軽くパソコンを叩いてみたりする。
それから数秒後だった。
急に画面が点いて、まばゆい光に包まれる。
…けれど、身体に害はなく、その光は一瞬にして大人しくなった。
画面には
《インストールが完了しました》という文字。
そして、目線を降ろした先に驚くものがあった。