Book9
□It is my monarch in you.
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親父が帰ってくるように願ったこの髪。
愛情をくれた継母が好き。と言った黒髪。
年子の弟と一緒の色の髪。
幼い頃からしていた誰も知らない願賭け。
気付けば髪を縛るようになって。
いつの間にか、腰に付くか付かないか位になって。
頑な意地なのか、違うのかなんて俺も知らない。
ただ気付けば、もう大分昔。
長い髪を片手で束ねて。
鋏を片手に。
また、君に会える日まで。
これが決別で。
これが決意で。
これで変るし。
これで始める。
ザクリ、ザクリ。
ザクリ、ザクリ。
音と共に、黒の髪がバサバサと地に落ちる。
削ぐこともしなかった所為か、髪は床を黒に染めて。
木目の色さえも解らなくなって。
有るのは、黒。
と、自分のではない紐靴。
前を見上げれば、間違いなく弟。
「何してんだ?」
「切ってる。」
ニヘラ。と笑って、そう答えれば、ガツン。と頭を張られた。
グーは痛いな。と返せば、もう一発。
「家、汚すなよ!。掃除は姉貴じゃなくて俺なんだからな!」