Heavenly Blue
□ある日の西浦バッテリー
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とある練習試合前の控え室。
他のメンバーはユニフォームに着替えると賑やかに部屋を出て行ったが、
阿部だけは残り、のんびりした三橋の着替えを待つついでに、
試合で使う作戦の確認をしていた。
「作戦っつっても、大して実力のあるチームじゃないし。
クリーンナップ以外は真っ向勝負でも…って、
聞いてるのか、三橋?」
「え? あ、うん…」
聞いていた、と三橋は頷いたが、
阿部にはすぐにそれが嘘だとわかった。
こっちを見つめてはいるが、
ぼんやりとした瞳には到底真剣さも集中も感じられない。
「…長打力のある5番には注意が必要だ」
「…うん…」
「上位打線は足があるから、撹乱に乗らないようにしないとな」
「…うん…」
「オレ、別のヤツと付き合っていいか?」
「ダメッ!! ダメダメ、絶対ダメ!!」
「…なんでそこだけ聞こえてるんだよ…」
急にパッチリと目を開け、
子供みたいに首を振ってしがみついてくる三橋をなんとか引き剥がすと、
三橋の周りに目に見えそうな程どんよりとした空気が立ち込めた。