Heavenly Blue

□雨と晴れ間と五月の病
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栄口が田島と話している横では、
阿部が三橋と小声で何かの打ち合わせをしている。

阿部が動かしている指の独特な動作や、
それを目で追いながらひたすら頷いている三橋の様子からして、
次の練習試合のことを話しているのだろう。

「…そういえばさ、なんで栄口が阿部と一緒に伝令しに来てんの?
 ここ9組だぜ? 1組の栄口じゃなくて、阿部か花井が来るだろ、普通」

「あ〜、それは…ちょっと阿部に相談したいコトがあってさ。
 7組に行ったら、今から9組に行くって言うからついてきたってワケ。
 7組から1組までは花井が行ってるしね」

「ふぅん…で、阿部に相談って?」

田島としては内容が気になって仕方ないのだが、
栄口は素直に答えようとせず、適当に言葉を濁した。

「それは…ちょっと、ね。
 でもあの阿部の様子じゃ、この時間はもう無理かも」

二人の視線の先では、三橋の物覚えの悪さにカチンときた阿部が、
三橋の肩をつかんでがくがく揺さぶっている。

「あ、阿部、そんなに振ったら、
 三橋も覚えたコトを全部忘れちゃうんじゃ…」

とっさの栄口のフォローに乗っかって三橋も半泣き状態で頷き返すと、
阿部はようやく怒りを収めて三橋を放した。

「…っと。悪い栄口、話す時間ほとんどなくなったな。
 続き、昼休みでもいいか?」

「うん。ついでだし、一緒に昼飯食おうよ」

「わかった。
 じゃ、授業終わったら弁当持って、1組まで行くから」

妙に仲良さげな阿部と栄口の姿は、
田島の心の中でくすぶっている気持ちをちくちくと刺激した。



 
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