Heavenly Blue
□カーテンの向こう側で
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――目が醒めたら、保健室のベッドの上だった。
「…あれ…?」
仰向けに寝かされた視界には、
白い天井と周囲を覆うカーテンしか映らない。
うまく回らない思考のまま、ぼんやりと天井を眺めていると、
突然視界の隅から田島が覗き込んできた。
「おはよ、栄口」
「…田島? おはよ…」
寝ぼけた返事をかえした後、ようやく思考の歯車が噛み合いだした栄口は、
急速に現状を把握すると、ガバッと上半身を起こした。
「な、なんでオレ、保健室なんかにいるの!?」
「あれ、覚えてない?
さっき、捕球に失敗して頭打ったんだぜ。
で、気ィ失ってたから、保健室まで運んだってわけ」
言われてみれば、額に疼くような痛みがある。
ユニフォームも、上着とシューズだけ脱がされているものの、
あとはほぼそのままで寝かされていた。
「…一人で運んだの? 田島が!?」
「まっさか〜。栄口を運んだのはシガポだよ。
オレは付き添いで来ただけ♪」
田島は淡々とそう言うが、
カーテンで仕切られた向こう側の診察室には、人の気配がない。
「…シガポは?」
「グラウンドに戻ってった」
「…保健の先生は?」
「さっきまでいたんだけど、職員室に行くって言ってた。
『わたしが戻るまで看病しててあげてね』
ってちゃんと頼まれてるし♪」
「…他に寝かされてる人は?」
「全部覗いてみたけど、誰もいないよ」
つまり、今保健室には田島と栄口しかいないのだ。
…それがどれだけ危険なコトか身をもって知っている栄口は、
なるべく田島を刺激しないように、グラウンドへ追い返そうとした。