Heavenly Blue

□SNOW DROP
2ページ/8ページ



「おい、三橋! 三橋っ!!」

間近から聞こえた怒鳴り声に、三橋は反射的に全身をびくっと震わせた。

「ごっ、ごめん。
 雪を眺めてたら、去年の冬のコトを思い出しちゃって…」

「去年の冬?」

「うん。去年、オレが三星を出て行った日も、こんな風にたくさん雪が降ってて…」

三橋の視線の先にあるのは、一様に雪をかぶって凍えている公園の遊具だが、
三橋が『見ていた』のは通い慣れた三星学園の校舎なのだろう。

「あの時は、本当に…もう野球をやめるつもりだったんだ。
 だから、どうして叶くんが『絶対野球をやめるな』って言ったのか、オレには全然わからなくて…」


(『叶くん』…ねぇ。)


三橋の口からあまり聞きたくない名前が出てきたのを聞いて、
阿部はわずかに眉をしかめた。


阿部と叶が会ったのは練習試合の時の一度きりだし、ろくに会話を交わしたわけでもない。

だからこれはあくまで阿部の勘でしかないのだが、
多分叶は三橋が好きだったんじゃないか、と阿部は思っていた。

…ただ、いつだったかに三橋が「阿部くんがオレの初恋の人だよ」と言っていたから、
三橋は叶を純粋に友達だと思い続け、叶も自分の想いを伝えるコトはなかったのだろう。

(まぁ、叶本人に確認したワケじゃねーし…全部オレの推測でしかねぇんだけど)


…阿部がそんな風に考えている頃、隣にいる三橋も同じく叶のことを考えていた。


(そういえば、最近全然電話してないけど…元気にしてるのかな、修ちゃん…)


叶とはたまに短いメールのやり取りくらいならしているが、近況を細かに伝え合うほどではないし、
実際に叶自身に会ったのは数ヵ月以上も前が最後だ。

(今頃は群馬も雪、降ってるのかな…
 あの時のコト、修ちゃんはまだ覚えくれてるのかな…?)

気になり始めたらいてもたってもいられなくなったのか、
三橋は右手の手袋を外して携帯を取り出すと、メールを打ち始めた。


 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ