Heavenly Blue
□SNOW DROP
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「おい、三橋! 三橋っ!!」
間近から聞こえた怒鳴り声に、三橋は反射的に全身をびくっと震わせた。
「ごっ、ごめん。
雪を眺めてたら、去年の冬のコトを思い出しちゃって…」
「去年の冬?」
「うん。去年、オレが三星を出て行った日も、こんな風にたくさん雪が降ってて…」
三橋の視線の先にあるのは、一様に雪をかぶって凍えている公園の遊具だが、
三橋が『見ていた』のは通い慣れた三星学園の校舎なのだろう。
「あの時は、本当に…もう野球をやめるつもりだったんだ。
だから、どうして叶くんが『絶対野球をやめるな』って言ったのか、オレには全然わからなくて…」
(『叶くん』…ねぇ。)
三橋の口からあまり聞きたくない名前が出てきたのを聞いて、
阿部はわずかに眉をしかめた。
阿部と叶が会ったのは練習試合の時の一度きりだし、ろくに会話を交わしたわけでもない。
だからこれはあくまで阿部の勘でしかないのだが、
多分叶は三橋が好きだったんじゃないか、と阿部は思っていた。
…ただ、いつだったかに三橋が「阿部くんがオレの初恋の人だよ」と言っていたから、
三橋は叶を純粋に友達だと思い続け、叶も自分の想いを伝えるコトはなかったのだろう。
(まぁ、叶本人に確認したワケじゃねーし…全部オレの推測でしかねぇんだけど)
…阿部がそんな風に考えている頃、隣にいる三橋も同じく叶のことを考えていた。
(そういえば、最近全然電話してないけど…元気にしてるのかな、修ちゃん…)
叶とはたまに短いメールのやり取りくらいならしているが、近況を細かに伝え合うほどではないし、
実際に叶自身に会ったのは数ヵ月以上も前が最後だ。
(今頃は群馬も雪、降ってるのかな…
あの時のコト、修ちゃんはまだ覚えくれてるのかな…?)
気になり始めたらいてもたってもいられなくなったのか、
三橋は右手の手袋を外して携帯を取り出すと、メールを打ち始めた。