Heavenly Blue
□君の居場所
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大会の試合が迫ってくると、エースの準太と正捕手の河合は毎日固定でバッテリーを組んで練習をするようになる。
利央が準太に構ってもらえる時間なんて、一日のほんのわずかな間しかないのだ。
(オレが正捕手だったら…もっと準さんと一緒にいられるのにな〜…)
視線の先では、河合と準太が仲睦まじい様子で冗談を言い合っている。
長く組んだバッテリーしか持ち得ないその雰囲気が、利央にとっては羨ましくもあり、悔しくもあるのだ。
(でも…遠いよなぁ、オレと準さんって…)
学年も、立場も、・・・気持ちの距離も。
――いつからだろう。
準太に対して抱く想いが、『憧れ』から『恋愛感情』に変わっていたのは?
――……
・・・それから夏も過ぎ去り、三年生たちは皆野球部を引退した。
たまに部活に顔を見せたり軽く指導をしてくれる事もあるが、そんな日は滅多にない。
三年の引退後、準太は桐青のエースの名を背負い、次の大会に向けて投球にさらなる磨きをかけていた。
そして一方の利央はというと…
まだ正捕手と呼ばれるまでには至っていないものの、準太の指名で毎日バッテリーを組んでいた。
初めのうちは嬉しかった。
同じ二年の捕手ではなく自分を指名してくれていることが、準太に実力を認められたみたいで。
・・・けれど。
河合が在籍していた頃は、あんなに準太とバッテリーを組みたいと思っていたのに。
こうして毎日組んでみると、河合と自分との実力の差ばかりを痛感するコトになった。
準太はあまり三年を引き合いに出すような言い方はしなかったが、
たまに「和さんだったら」と口にすることはある。
もちろん準太としてはアドバイスのつもりで言っているのだが、
「和さんだったら」と言われるたびに利央は気持ちを沈ませた。
早く準太の期待に応えたい、準太の力を活かせるようになりたい。
もっと、好きな人に自分を認めてもらいたい。
利央はつのるばかりで一向に消えない焦りの気持ちを抱えながら、
それでも毎日防具を身につけ、準太の球を受け続けた。