Heavenly Blue
□君の居場所
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――それはまだ、球児たちが夏を迎える前の話。
その日も桐青高校のグラウンドでは、
野球部員たちが手近な相手と軽く柔軟をしたり、ささやかな無駄話で盛り上がっていた。
・・・そんな中、
「じゅーんーさんっ!!」
「うぉっ!?」
背後から突撃してきた利央に飛びつかれ、準太は危うく利央ごと転びそうになった。
「っぶねーなー、お前…
なんでそうやって毎回毎回、背後から抱き着いてくるんだよ、お前は!」
しかし準太の非難などものともせず、利央は準太の背中にのしかかったままで甘えた声を出す。
「ねー準さん、今日練習終わったらなんかおごってくださいよ〜」
「お前な、何回オレにたかる気だよ…
どうせたかるなら三年にしろよ。和さんとかなら、気前も良さそうだし」
「イヤっすよ!
三年にたかったりしたら後で絶対痛いメに遭わされますもん!
その点準さんは優しいから、安心しておごってもらえるんスよ♪」
「…それ、褒めてんのか?
それともおだててんのか?」
「やだな〜、褒めてるに決まってるじゃないっすか!」
調子のいい利央の言葉に準太が何か言い返そうとしたが、
それを遮るように声がかかる。
「準太!! そろそろ始めるぞ!」
「あ、はいっ」
声の主は目で追わなくてもわかる。
野球部のユニフォームを着ている間だけは、利央のテンションを下げてしまう、その声。
「ほら。もう離せよ、利央」
「……」
利央はずるずると手を離すと、河合の元へ走っていく準太の背を複雑な表情で見送った。