無双

□狂歌
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――パアン!

頬を強く打たれ、障子に細い体がぶつかる。

ずるずると畳に座り込み、打たれた政宗はガチガチと怯えるかのように歯を震えさす。
その様子を見れば何とも哀れなものだろう。

打った本人、兼続は怯える政宗には構うことなく、茶色の髪を鷲掴みする。
そのまま無理矢理立たせ、目線を合わせる。

「何故私から逃げようとする?政宗」

「……っ、……」

兼続が聞いても政宗は密かに口を動かすことしかできない。


「ああ…そうだった、お前は喋れないんだったな」

残酷な言葉を言い放つ兼続に政宗はきつく睨みつけるが、兼続を煽る結果になる。
視線を下に下げる。目線先の細い首には包帯が巻かれており、そこは黒い血がじわりと滲んでいた。

「ふ…煩く吠えないよう、喉仏を取り出して正解だった」

冷たい兼続の目が首を舐め回すように見る。


肩に掛けているだけの着流しを除け、逃げ足になる政宗を組み敷く。

「………!」

びくっと震える政宗。その表情でさえ兼続は愛しく感じた。

ふと、幾日前の事を思い出す。

己を呼んでいたあの声が二度と聞けないのが残念だが、仕方がないと思い、短刀の刃で死なない程度に喉へ突き刺した。
目を見開き、口と喉から大量の血がごぼごぼと出てきていたのを覚えている。

それが酷く美しかった。

愛する者の血で真っ赤に染まった手と刃。

嗚呼―……、己は今凄く幸せだ

あの高揚感は一生忘れることはないだろう。





「……ッ!、………〜〜」

激しく揺さぶる兼続に、政宗は嫌々と頭を振る。

繋がっている内はとても熱く、すぐにでも性を放ちたいと政宗の腰を掴み、壊れるのではないかと思うぐらい一層速さを増す。
出し入れされる蕾からは血が溢れ、白い太股に向かって伝う。

「……はっ…、政宗…愛してる……私から離れないでくれ…っ」


不安は消えない。
軟禁し、喉を切り裂き声を失わせても彼が自分から逃げるではと恐れてしまう。

三成、幸村も己より先に死に、酷い孤独感を味わった。
これ以上周りの者達が消えてほしくない。


そして愛する彼も……。



政宗の喉からはひゅう、と空気が通り抜ける音しか出ない。
酸素を吸おうと必死に口を動かそうとするが、兼続の口によって塞がれる。

何もかもを奪ってしまえば、政宗はきっと己を頼りにしなければ生きれないと知るだろう。
自嘲の笑みがこぼれる。





この愛情は醜く捩れていることは一番自分が知っている。

だからこそ、彼の全てを奪い、このようなことをしているのだろう。







狂った男を止める者は、この先誰もいない。
声なき哀れな片目の竜は毎夜、この男によって踊らされる。


互いの命が果てるまで











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