おんなのこ☆おとこのこ

□6月 少女の涙、少年の想い
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「ああー、もうすぐ引退じゃん」

昼休み、いつものメンバー。
部活引退1週間前。
真穂と男子バレー部の面々が昼食を共にしていた。
この状態は基本的に反感買いそうで嫌なんだけど。

「真穂のクラスは基本的にそこんとこ自由じゃん。」

「女子バレー部は女子で別々だしまあ平気でしょ。」

っていうのが男子たちの弁。
女子部は確かに人数少なくてそこんとこばらばらだし。
クラスはクラスで女子8人しかいないし。
ま、いっかってなわけで納得してしまった私でした。

「真穂ちゃん、チームの様子はどうよ?」

拓海の悪友の1人、長瀬順平が尋ねた。

「ん?さいこーにばらばらー」

「まじですか!?なにがあったのよ?」

もう1人、真穂と同じクラスである水島聡が答える。
男子部の同期はもっと人数がいるが、基本的にいつも昼食を共にするのはこの3人。

「キャップがね、こっちに走ってんの」

『こっち』という時に、私は指をハート型にした。
要は彼氏第一になっちゃっているのだ。うちのキャプテン大田麻子が。
しかも同期は私と麻子だけ。
引退1週間前に何色ボケかましてくれてるんだか。

「聡くん、聞いてくれる?基本的にデートの時は練習来ないから!」

「ちょっ、まじかよ!だからあの人練習で見かけないんだ」

「女子だと人数少ないからしんどくね?」

「ほんとに無理。チームがまとまんない」

順平も会話に参加してきた。この4人だと、妙にざっくり話ができて非常に楽。

「ひえー、真穂ちゃんコワイ!後輩たちなんも言ってないの?」

「もー順平君!言ってるよ、だけど直接言えたもんじゃないでしょ?」

そう、私の悩みのタネは今そこだ。
爆発しそうな後輩と色ボケキャプテン。均衡状態を保つのもむずかしくなってきた。
そろそろばっさり話をしようと思っている。
正直なところ、彼女の代わりにスタメン張れる後輩なら何人もいる。
だから別に辞めてくれてもかまわない。
これが私の気持ちだ。

「ちょっと、兄貴はなんかしてやらねーの?」

「え?俺!?兄貴はそこまでシスコンじゃありません!」

4人で声を上げて笑った。
そう、順平と言えば鋭いツッコミと茶々を入れて周りを笑わせるポジション。
その点、聡はのんびりとした口調のなごみ担当である。
拓海はツッコミ待ち?私には茶々ばっか入れるのに、部活になると妙にいじられている。
妙にこのトリオは相性が良い。

そして、私がこの中にいるのも妙に居心地が良かったりする。

*****

(よし、練習だ!!)

放課後、ついに部活の時間がやってきた。
引退前で練習にも気合が入る。

「真穂さーん!お疲れさまでーす!」

後輩の一人、高宮明子が私に話しかけた。
中学からの後輩で、結構ばっさりな性格で物怖じをしない。
今回の麻子の件でも、一番イライラしているのは彼女に違いない。
ちなみに順平の彼女でもある。
順平からの情報が入るからか、バレー部きっての情報通だったりする。
私と拓海との関係も知っているかと思いきや、そこはさすが順平。バラしていない。
全く持ってできた男である。

「明子。準備、一緒にやろうよ」

「もちろんです!先輩なのにすんません」

「いいって、私も早く練習したいしさ」

2人で話をしながら準備をしていると、麻子が制服のまま体育館に表れた。
もしかしたら、またかな。
手招きして私を呼んでいる。

「真穂、ちょっと今日も用事で休むね。」

「用事ってなに?」

「ちょっと」

そう言い残すと、私の答えも待たずに去っていってしまった。
あーあ。またかよ。
私は心の中で悪態をつく。

「真穂さーん。またですか」

「またですよ、私がなんとかするから、放置しとき」

「はい、もちろん。てか、真穂さんも彼氏できません?」

はい?
私は言葉を失った。
ま、まさか・・・・見られた?拓海と帰ってるところ。

「え?なんで?」

「なんかこないだ、男の人と一緒に帰ってませんでした?自転車で帰るの、見ちゃいましたよ」

「い、いやあーあれは中学の時の友達だよ、他校の!偶然帰りに会ってさー。彼女と上手くいかないっていうから相談に乗ってたんだよ」

「えー!?そうなんですかー?てっきり彼氏かと・・・・」

「残念!まあ、こんな部活バカもらおうとする物好きもなかなかいないよ」

「またまたあ〜真穂さん実はめっちゃモテてるんですよ!特に男子部に・・・」

「っっつ・・・ほんとに明子は冗談上手いんだから、ほれ、練習に集中するぞ〜」

「はーい」

あ、あぶなかった・・・。
夜での目撃で、顔を見ていないだろうという予想は強ち間違ってはいなかったみたいだ。
しかし、明子にこう言われるということは、いろんなところに噂が散っているとみて間違いない。
こいつのゴシップはすぐにいろんな人に回る。

あーあ、練習に集中しよう。

ん?男子部に・・・なんだって?

*****

「だあああっ!もう!」

部活の帰り道、真穂は何だか妙に荒れていた。
いや、俺だって鈍感じゃないからいろいろ察するけどさ、
それでもこの荒れようは・・・・ないな。

「荒れてるじゃねーか、どした?」

「もーっ、いろいろ!」

だからそのいろいろが知りたいんですけど。

「麻子さんのこと?」

真穂はうなづく。

「それだけ?」

「ううん、そのーなんていうか、見られた」

だから何を?主語、主語を言え!!
ほんっとに適当なんだよなあ・・・コイツ。

「私たちが一緒に帰るところ」

「はあああ!?マジかよ!?」

「うん、でも、拓海だとはばれてない。とりあえずごまかしたから」

ならよかった、一瞬死ぬかと思った。
主に真穂にぼこられる点においてだけど。
俺は兄弟なら一緒に仲良く帰るのはアリだと思ったけど、もしかしてお前は違うのか?

「こうやって一緒に帰るの、やめっか?」

「うーん、別に拓海と一緒に帰るのはいいんだけど、こうやってヘンな噂になるのがねー」

「じゃあどっちにする?」

「・・・・一緒に帰ります」

よしよし、我ながら可愛い妹だ。
まあ、その順平の彼女の噂も不確定な訳だし。
俺らだって、時間がかぶった時だけ一緒に帰ってるわけで、毎日でもないし。

「じゃあそれはいいとして、麻子さん、どーすんの?」

男子から見ても、大田麻子の行動はナシだってことで一致している。
まあ、なんだ、男子は女子のゴシップ関係には興味津々だし、いい話のネタだから盛り上がるんだよなー
真穂も真穂で少し冷たいと俺は思うけど・・・・
女子には女子の事情があるし、俺らがそんな深く関わっても、ねえ。

「明日、部活に来ても来なくてもケリつけるつもり。もう、練習も4日しかないし、白黒つける。」

「どーやって?」

「直接2人で話す。ただ、場合によっては、私キレるかも」

真穂の顔が般若のように一瞬見えたのは俺の気のせいだとしても、こりゃー相当キてますね、妹よ。
恐ろしや恐ろしや・・・・。

「拓海、私間違ってないよね?」

少し不安そうな真穂を俺は初めて見たわけで・・・
妹ながら少しどきりとしてしまう・・・イカンな俺も。

「だいっじょーぶ、俺でも同じことしてるよ。」

だから、

とりあえず、

いらいら吹っ飛ばしてこい。

お前はいつもの淡々とした調子と斜に構えてる感じのほうがよっぽどいい。

半分本気、半分は違う意味での本気(とばっちりを受ける意味で)俺はそう思った。
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