短編

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「オラお前ら。彩月野に宮野、とっとと席につけ。そろそろチャイムがなるぞ」
「えぇー………もうちょっと穣ちゃんにベッタリしたい」
「却下。つーか宮野、お前昨日のレポートとっとと出せよ?お前だけだかんな、出してねーの。従兄弟だから甘やかすと思ったら大違いだぞ」
「ひっ、酷いよ穣ちゃん…………」
「よし彩月野。コイツ引っ張ってけ」
「あいよー、了解ですお(^-^ゞ」


どこぞの軍人っぽく、彩月野は両足を閉じて敬礼をする。


「ほら行くよ、蓮樹君!………んん〜!蓮樹君重いよぅー……………」
「何言ってるんだよ!僕はいつでも穣ちゃんと愛の行為が出来るように常に○○sをキープしてるし!!」
「蓮樹君、僕はその−5sだよぅ……。ポッチャリ系も萌えだけどにゃ〜」


ずるずるずる。


重い重いと嘆きながら、必死に宮野を引き摺っていく彩月野を見て、案外この二人はお似合いかもしれないと思った。





††††††††††





キーンコーンカーンコーン♪


すっかりと慣れ親しんだチャイムの音が響き、ようやく最後の授業が終わったかとため息をつく。
今日1日、ずっとウイカの事で頭がいっぱいだった。
昨日や今朝の気恥ずかしさもあって、会いたいような会いたくないような。
そんなことを心中でぶつぶつと呟きながら、とっとと授業に使った教材を纏める。


「結城先生」


教室を出ていこうとしたとき、ツイッと誰かに袖を引っ張られ、振り返る。
そこに居たのは赤縁眼鏡を掛けた黒髪ボブヘアの少年だった。
新入生らしくキチンとした身なりの、いかにも優等生といったその子は、かなり見覚えのある生徒だった。
いや、聞き覚えのあるの間違いだった。
それは当たり前。
なぜならコイツは、毎日のように日下の話に出てくる愛しの相手の凪 柚真だからだ。
そいつがどうして俺に話しかけてくるのかというと、理由は様々だ。
勤勉家らしく授業に関しての質問をしてきたり、日下の様子を聞いたりなど。


「どうした?凪」
「最近、誉兄さんの様子はどうですか?あまり会わないので少し心配になってしまって…………」


申し訳なさそうに日下の様子を聞いてくる凪。
身長が小さいからなのか、まるで小動物の様で可愛い。
まぁ一番はウイカだけども。


「最近何かと苛々してるが大丈夫だろ」
「そうですか………………」


ガックリと肩を下ろす凪。
コイツも苦労性だよな。
誉と柳瀬の間に挟まれてよ。


「まぁ、頑張れや」
「はい…………」


軽くポンッと凪の頭の上に手を置いて微笑みかけてから、教室を出る。
凪 柚真。
あいつになるべく心配かけないようにと日下に言い聞かせよう。
…………俺も大概お節介だよな。
小さくため息をついた。






†††††††††






そういえば明日の実験の用具、用意しとかなきゃなぁ……………そんなことを考えながら、生徒達のレポートに目を通すため、それを置いてある科学準備室に向かう。
さぁてドアを開けようか。
そう思いポケットから鍵を取り出そうとしたとき、閉まっているはずのドアがいきなり開き、誰かに無理矢理中に引き込まれる。
誰かと思うとそれはウイカで、案外………というか、かなり驚いた。


「ウイカ?何で………」
「このやろー……………バカ」


いきなり貶される。
何だっていうんだよ?


「何なんだよテメェ、くそ、馬鹿!キ、キキキ、キスマークなんて付けやがって………。お陰で恥かいた」


顔面を真っ赤にしたウイカが後半勢いなく、そう言った。
よく見ればその首もとはうっすらと赤くなっている。
でもキスマークなんて付けた覚えはない。
顔を近づけてよく見ると、それは。


「ただの虫刺されだろーがよ」
「……………マジで?」
「マジで。つかキスマークなんか付けた覚えねーもん」


そう言った次の瞬間、何故か殴られた。
いや、マジで何で。
わっけわかんねぇ!
流石の俺もイラッときて、ウイカを無理矢理壁に押さえつけた。
また殴られたらたまんねーし?


「何すんだよ、離せ!」
「何すんだよはこっちのセリフだっつーの!いきなり殴られるし。何なんだよ」
「当たり前だろうが!キスマークなんか付けた覚えはねぇだ!?お前今朝、俺になんつったよ!覚えてねぇつったくせに、嘘つきやがって……………バカヤロっ」


………………どうやら、マズったのは俺らしかった。
確かに、失言でした、はい。


「俺なんかからかって楽しかったかよ!?ふざけんじゃねぇよ!酒の勢いつったから…………俺は…………………忘れようって、思ったのに」
「ウイカ?」


言葉を紡ぐ彼の瞳にはみるみる涙が溜まっていき、さっきの殴られた怒りなんてどっかに消えていった。


「だから……………っ。お前に、彼女が居るからずっと我慢してたのに。冷たい態度も取ってたのに、ないだろ、コレは。確かにお前になら抱かれても良かったけどよ?好きだから……。でも流石に酷いだろ。何でだよ、馬鹿」
「ちょ、ストップ!今、何て言った?」
「馬鹿」
「その前!」
「流石に酷いだろ」
「もっと前!」
「好きだから」


咄嗟に相手の身体を抱き締める。
安心した。
ウイカの体温を感じる。
鼓動を感じる。
大丈夫、夢じゃない!
夢じゃねぇのに、ウイカが、俺の事、好きって言った。


「あー…………嬉しい、ウイカ。好き、愛してる!!!」
「え、あ、?」
「両思いだ、俺だけじゃねぇ………!」
「だってお前、彼女……………」
「さっきから彼女って誰のことだ?俺に彼女なんていねぇよ!俺は昔から、ずっとお前一筋だ」


そう言って涙の溜まった目尻に口づけを落とすと、相手がみるみる顔を赤く染めた。


「馬鹿…………やろっ」
「好きだ、ウイカ」
「……………け、敬語だろ!」
「好きです、センパイ」
「っ………………、てめぇっ」


真っ赤に染まった彼が可愛くて、ついつい乱暴なキスを。
その時廊下から、パサッという何かが落ちる音と、誰かの足音が聞こえた。
誰かに見られた。
チッ、と軽く舌打ちをして、仕方なくキスを中断。
廊下に落ちたプリントらしきものを拾い上げる。


「誰だった?」


心配そうな顔も可愛らしい。
両思いに成り立てだから、尚更。


「ん?宮野。宮野 蓮樹。俺の従兄弟」


レポートに書かれた名前を読み上げると、少しだけ安心したようにウイカの顔が緩んだ。


「後先考えねぇからだ」
「仕方ないだろ。ようやく両思いなんだから」


そう言うと、ウイカはまた顔を真っ赤に染めた。
ようやく捕まえた、両思いになった。
安心したら少しだけ、ほんの少しだけ涙が溢れた。
慌ててそれを拭う。
昔、いじめられっ子でよく泣いていた俺を励まそうとしたウイカが、涙の数だけ物語が在る。
その分だけ希望が継続する。
だから泣いていいと慰めてくれた。
その時の俺は、ウイカのその言葉にすがって沢山泣いた。
今の生活から抜け出して、沢山の物語の中の幸せな物語に繋がりますようにって。
でも、もう泣かない。
もう俺は、ウイカが側に居る一番大切な物語を手に入れたから。









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なんか稔が意味不明なうざいやつになってしまった。
何故だ!←
私の文才が無いからです!
 

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