短編

□感情
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入学式。
春の風が、名門私立の男子高校入学という最大の敵を撃破した僕に、優しく吹き付ける。
此処までの道のりは、本当に辛かった。
泣きたくなったさ!
それでも!
それでも僕がこの学校に入学したのには理由がある。


「お前ら、おら、静かにしてやがれ」


そう生徒達に乱暴に話し掛ける教育担当の先生、結城 稔(ユウキ ミノル)に会うためだったんだよ!
大好きな大好きな稔ちゃん…………。
僕と稔ちゃんは従兄弟で、小さい頃からずーっと一緒に居た。
そうして稔ちゃんの良いところを知る度に僕は稔ちゃんに引かれていき、ついには僕の嫁にすると(勝手に)決めてしまった。
そんな稔ちゃんが働いてる高校に行かなくて、僕はどの高校に行くんだよ!?
まぁ、名門だけあって勉強は本当に大変だったけどさ。
…………とまぁ、こんな感じに妄想………いや、回想にふけっている間にいつの間にか入学式は終わっていて、気づけば教室。


「次、宮野。……………居ないのか?宮野!」
「は、はい!居ます、居ます!!」


いきなり名前を呼ばれて立ち上がる僕。


「さっさと自己紹介しろ。後が沢山つっかえてんだよ」
「はい。初めまして、宮野 蓮樹(ミヤノ ハスキ)です。よろしくね?」


稔ちゃんに急かされつつも、僕の天使スマイル★(こんなに可愛いんだから間違いじゃないはずだよ?)を向けながら挨拶をする僕。
その笑顔を向けられたクラスメイトの全員が、顔を赤くして視線を逸らす。
まぁ、当たり前だね。


「ふぉぉぉぉぉっ!萌えだよ、萌え!何、小悪魔系?ふにゃあ〜、かぁいいよぅ!ハァハァ」


そんな僕を前にして、いきなり立ち上がって手を握ってきた変態。
…………誰、この変態。


「あ、あの!受けですか?攻めですか?臣(オミ)的には受け希望なのですがっ!」
「…………君、誰?」
「ふわぁぁぁぁァっ!申し訳ないのですっ!申し遅れました、臣は、彩月野 臣(サツキノ オミ)と申しますです、はい!!」


そう慌てながら名乗った、変態野郎もとい彩月野 臣。
こんな変態との出会いが、この後僕を変えるなんて、この時は想像もしていなかった。
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