短編

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情報屋サイド




どこの何だろうとも、なんのなにだろうとも。
そこにネットが繋がる限り、俺は調べるよ。
調べ尽くすよ。
裏の裏と言わず、隅から隅まで裏の裏のそのまた裏まで読んで喚んで詠みまくって、弄くりまわす。
恥ずかしいことから嬉しいこと悲しいこと驚くことまで、貴方の全てを暴いてあげる。
それが情報屋のお仕事。
…………否、俺の趣味。


「会長も代替わりしたしィ………そろそろ何かしら情報を掴んどくべきかにゃあん?こっとしの生徒会さんはねー、何かと秘密多し多し!だからねぇ」


クスクスクス……と笑いながら、俺はPCのキーボードに手を置いた。
右と左で、違うキーボードを操作する。


「んー……やっぱこのPCとPCは統合させて、もっと性能良いやつ作った方がいいなぁ、コレ。……………ん?は??」


俺はPC上に現れた文字に微かに首を傾げた。
俺のオリジナルの警告ソフトだ。


「俺様のんPCをハックしようって輩が居るーってことね、ハイハイ。売られた喧嘩は買うよ?つかハックされたらこまっし」


キーボード上を滑るように滑らかに俺の指が動いていく。
コイツ、中々やるな。
俺は軽く舌打ちをした。
幾つもの文字が次から次へと流れていく。
それに伴い、その膨大な情報量に頭が回らなくなっていく。


「っくそ!俺っちのスピードについてこられる上にさぁ………何なんだよ何なんだよコイツ!!!!もはやっ、この処理能力の速さは人間じゃねぇええええ!!!」


ついつい悪態が口をついて出る。
余裕はクソもない。
真剣の使いすぎて息が上がってくる。
辛い。
相手が仕掛けてくるものの技術の難易度は別に大して高くはない。
ただ、処理スピードが異様に早いのだ。
段々とこっちのスピードが落ちていくのに対し、相手も多少ペースダウンをしていくものの、ダメージはこちらの方が遥かに大きい。
ペースが落ちたら次の人に交代する。
そんな団体競技をやっているのではないかと疑ってしまうような早さ。


「ハハハ…………まっさっかねぇ……………………………。でもでもでもさぁ、もし本当だったらさぁ?………こんなんフェアな勝負じゃねぇよぉ…………………」


耐えて耐えて耐えぬいて、それから一時間後。
俺はPCの前に突っ伏すようにして倒れた。


「せけぇよう、せけぇよう………。フェアじゃないよぉおおおおおお!!!」


防音なのを良いことに、俺は盛大に叫んだ。
チラリとPCに目をやると、相手にハックされたその画面に『水原 月夜君ですね?』出ている。
………とりあえず無視をした。
『こちらは生徒会です。もう一度聞きます。あなたは水原 月夜君ですね?』
…………………とりあえず再び無視をした。
『あなたのPCのデータを見せていただきました。生徒会としては見逃せないものが沢山出てきてしまったのでね……。今からあなたの部屋に伺わせて頂きます』
………とりあえず無言でドアにロックを掛ける。
そして部屋にあるPC以外のもので自分が運べる範囲のものを、全てドアの前に置く。
精一杯のバリケードだ。
安心してPC用の回転椅子に腰掛けてから、やはりもう一度立ち上がる。
そして窓に鍵を掛けてカーテンを閉めた。
そうして今度こそ、安心して椅子に座る。


「俺は誰とも顔をあわせない」


小さくそう呟いた。






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