短編

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次の日。
目が覚めると、いつもと違う天井だった。
しかもやけに布団が固く、身体が痛い。
痛む身体を無理矢理起こしてから、ようやく昨日のことを思い出した。
ソファーでヤっちゃったあと、気を失ったウイカに毛布を掛けて俺は床で寝たんだった。
ソファーに目を向けると、未だあどけない表情で眠っているウイカの姿があった。
それを見て、何故か無性に安心をする。


「ん………………」


小さく声を漏らしてウイカは寝返りを打った。
そこに昼間の俺様ホスト教師の面影はない。


「ウイカ……………………」


優しく目を細めて微笑みかける。
寝苦しそうに眉を寄せるウイカの頭をしばらく撫でてやると、それが少しだけ和らいだ。
愛しい。
好きだ、愛してる。
昔、お前が俺を必死に慰めてくれたあの日から。
そうあの日から、ずっと。
こんなにもお前に惚れてるのは、俺だけなんだろうか?



†††††††††††



「ん……………………○×△□!?」


ウイカの部屋の台所でコーヒーを飲みながらくつろいでいると、不意に聞こえてきたウイカの叫び声。


「あ、起きたのか?ウイカ」


ひょいっと顔だけを出して声をかけると、泣きそうな顔をしてテンパっているウイカが見えた。
何アレ、めっさ可愛いんだけど!


「な、ななな何でミノ……結城がいんだよ!つか何で俺素っ裸、腰いてぇし、うわ!!なんかこの白いの何!部屋がイカ臭い…………!?」


毛布を巻き付けたままぐるぐると頭を働かせて考えるウイカ。
しばらくして容量オーバーしたのか、そのままソファーに倒れ込む。
…………この白いの、っておい。
明らかにお前が出した昨日のアレが乾いたヤツじゃねーかよ。
やっぱ風呂は無理にしても、タオルで拭いてやるぐらいの優しさは持つべきだったか?


「あのな、ウイカ。実は昨日、ヤっちまったみたいなんだわ。俺ら」
「…………ヤっちまったって………何を」
「……………セックス?」
「何で疑問形?つか、え?え?セ、セックス!?」
「あぁ……………。まぁ取り敢えず考えるのは後にして、風呂でも入って来いよ。入れてあるから」
「そんな場合じゃないだろ!」
「でも中出しはしてないっぽいから良いけど、中に精液が残ってると酷く腹下すらしいぜ?それでもいーんなら俺はいーけど」
「……………………入る」


流石にテンパっていたウイカも腹下すのは嫌なのか、素直に風呂場に向かった。
そりゃそうだ。
男とのセックスが原因で腹下しましたなんてシャレにもなんねぇ。
ヤられたのが俺でも、キレる前に取り敢えずは風呂に行くな。
……………そのあとに相手を殺すけど。




††††††††††




ほどなくして風呂から上がってきたウイカは脱衣場で着替えたのか、服を替えていた。
上は紫と黒のボーダー肩出しの服に、下は灰色のスウェットといった、きわめてラフな服装だった。


「んで、取り敢えずゆっくりと覚えてる限りで話せよ、お前から」


昨日ヤったばかりのソファーに堂々と座る俺から距離を置いて、木製のイスに座ったウイカ。


「俺もあんま覚えてねー」


嘘。
覚えてるけど、知らないふり。
純情なウイカを相手が酔ってんのを見て無理矢理抱いたなんて言えるわけねぇじゃん。


「…………………セックス。俺と、結城が、セックス」
「あぁ、したな」
「………………………………セックス」
「しつけーな」
「セッ……………クス」
「あぁ、もう黙れ!」
「男と………結城と、セックス」


永遠ブツブツと呟くウイカ。
そんな相手に若干………いや、かなり苛つきながら、ジーンズのポケットに入っていた煙草の箱を取り出す。
乱暴な扱いを受けたせいで、すっかりひしゃげてしまっているそれから一本取り出すと、火をつけた。
…………そんなにブツブツ言うほど俺とのセックスが嫌だったのかね。
あぁ、イライラする!


「つかお前、仕事行かんくていいのかよ」
「仕事?」


相変わらずブツブツと呟きつつ、身体中からネガティブオーラを纏ったウイカがフッと時計に目をやる。
数秒。
そして、耳を叫びたくなるほどの叫び声。


「あああああああ゛゛゛!!!?」


叫びたくなるのも分かる。
でも、ちょっと黙れ。
マジでうるせぇ。
出勤時間、7時30分まで。
只今の時刻、8時。
ちなみに本日、、、平日。
バリバリの出勤日だ。


「なんで早く言わねぇんだよ!」
「お前がウダウダといつまでも落ち込んでたんだろ。恨むんなら酒に呑まれた自分を恨め」
「う゛ー……………チクショウ!!」


恨めしげな目でこちらを睨み付け、その場で服を脱ぎ出すウイカ。
………………っておい!


「おまっ、ちょ、何やってんだよ!」
「着替えだ、着替え、バカ!!」


そう泣きそうな声で怒鳴る声が聞こえたのと同時に、ウイカの程よく焼けた裸体が目に入る。
それを見ていると昨日の情事が色濃く思い出され、目のやり場に困って後ろを向いた。
きっと今の俺の顔は真っ赤だろう。
くそ、俺情けねー!!!


「つかお前はどうすんだよ?結城」
「あ?何が」
「服だよ、服!私服のまま学校になんぞ行けるかボケ」
「………いい、かったるい。休む」
「お前はどこぞの不良高校生か!社会人がそう簡単に仕事休めるわきゃねーだろが!!」


また怒鳴って怒るウイカが、ポスッと何かを投げて寄越す。
ちょうどよく頭に乗っかったそれを確認してみれば、グレーのスーツとベルト。
グレーのスーツと言っても俺が着てるような普通の地味な物ではなくて、どこぞのホストかよ!と突っ込みたくなるような派手な物。
ベルトも普通の茶色のベルトで良いものを、何故か白にビーズのような物が付いたデコデコなやつ。
………………明らかに俺のじゃない。
いや、ウイカの部屋に俺のスーツがあったらあったで困るんだが。


「それ着てけ。俺のスーツ、貸すから」
「……………この派手派手スーツを俺に着ろと?」
「なんなら真っ裸で言ってもいいんだぜ?」


真っ裸にひんむいて縄で縛って拘束して、犬みたいに引っ張って行ってやろうか?とウイカが笑みを浮かべながら言う。
うん、目が笑ってない。
半ば本気のウイカに、俺は仕方なくスーツに腕を通した。


「オラ、しっかりしろよ」


俺のスーツをトントンと軽く叩いて整えるウイカ。
……………ちょっと新婚さんっぽいとか思った俺、死ねばいい。
あぁ、もう!少しは自重しろよ俺!
馬鹿だろ、俺!!


「っおい、いつまでボーッとしてんだ、とっとと仕事行くぞ!」


自己嫌悪に陥ってる俺にウイカがそう声をかけて、無理矢理引っ張ってかれる。
ちょっと、いや、かなり幸せかもしんない。
今なら死んでもいいって思ってる俺は、もはや何なんだ。
あぁ、自分が気持ち悪い。





††††††††††





思いっきり遅刻した俺達は理事長辺りにこっぴどく怒られたあと、各々が担当している教室へと向かった。


「あ、穣ちゃん!」


そう言いながら嬉々として抱きついた来たのは、従兄弟であり、俺の生徒の宮野 蓮樹(ミヤノ ハスキ)。
甘やかしたのが悪かったのかどうだったのか、今やこいつは俺にべったり。
ほんと、どこで育て方を間違ったんだか。


「ひゃっほい!?結城センセーのそのスーツ、外夏ちゃんのなんだにゃー!臣の居ないとこで何があったのかな!?」


あー、こいつ誰だっけ?
俺は目の前の可愛い系の生徒の名前を思い出そうと、頭をフル可動させる。
ん、思い出した。
宮野と最近仲のいい、同室者の彩月野 臣(サツキノ オミ)だ。
つか何でこいつ、ウイカを呼び捨てにしてんだよ。


「おい、彩月野。外夏って誰だよ?」
「あれれー蓮樹君知らなーいの?」
「知ってたら聞いてないんだけど」
「外夏ちゃんはぁ、笹崖 外夏先生!まさに俺様受けにピッタシ!な可愛い美人先生なんだにょ〜★」


お、なんだコイツ分かってんじゃねーかよ。
ウイカは確かに可愛い…………というか綺麗系な美人先生だよな。
……………じゃなくて!
彩月野 臣。
今までノーチェックだったが、もしかしてコイツもウイカ狙い…………?
とか俺が勘違いも甚だしいという単語が似合うようなことを考えていると、不意に彩月野が俺の耳元に唇を寄せた。


「大丈夫なんだよ、結城センセー。臣は別に外夏ちゃん狙いじゃないお〜。むしろ結城センセーを応援、頑張って!俺様×俺様テラ期待、頑張ってにょ★」
「んなっ…………」


なんでお前俺がウイカを好きなん知ってんだよ!
とか色々言いたいことはあったんだが、


「僕の穣ちゃんに触らないの!」
「にょ、ご〜め〜ん〜!うにゃ、もげるよぅ禿げるよぅ痛いよぅー………。蓮樹くーんー、い゛だい゛〜」


てな感じで髪の毛を引っ張られながら涙目になっている彩月野を見てたら、怒る気が失せた。
ま、なんか悪いやつじゃなさそうだしいいやみたいな感じだ。
何だかんだで仲の良さそうな二人を見ながら、それに自分とウイカの姿を重ねてため息をついた。







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うーん、なんか地味に長いぞ………。
でも次回には終わります、、、多分!←
ようやく大好きな臣を出せました。
何かちょっと短編だけどシリーズっぽくしていきたい。
まだ固定CPよろしく、いくつかのCPが出る予定なんですが、一番好きなのが、やっぱり蓮樹×臣の受け×受けコンビ。
最初に出たキャラクターは、まだ名前しか出てきてない柚真なハズなんだけどおかしいなぁ……愛着は恐らく一番あるはずなのにWw
でも臣を書いてるのが一番楽しいww
 

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