短編

□雨を連れゆく
4ページ/4ページ


空良の為に、僕は、負けられないんだ!


「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛!!!」


無理矢理動かした身体に、激痛が走る。
けれど、なんとか唇を噛んで堪えると、僕は叫び声を上げて敵に斬りかかった。
はたからみれば闇雲に斬りつけているようにしか見えない、太刀筋。
けれど頭は冷静だ。
今回は、計画通りに行動しているのだから。
昔、空良と一緒によく使った作戦だ。
相手は止めをさそうとする時、大抵が大きく振りかぶる。
そしてそれを避けられた時、相手に隙ができる。
だから相手に自分は冷静さを失って、もうダメだって所を見せつけてやって、相手を誘導する。
案の定、ぶるぶると震えながら立ち上がる僕を見て、相手はにやにやと止めを刺す機会をうかがっている。
………悪趣味。
そしてそれを二回ほど繰り返した後、敵が動けない振りをしている俺に向かって大きくナイフを振り上げた。
好都合。
けれど足にいい加減に疲労していたのか、思いの外うまく体は動かす、肩でそれを受け止めた。
でも、大丈夫。
僕が振った刀は、相手の脇腹に食い込んでどす黒い血で汚れていた。


「肉を切らせて骨を立つってね?」
「っう、、こ、の…………」


相手は顔を痛みにしかめて、僕の腕を振り払った。
それが逆効果。
ストッパーを無くした傷口からは血が溢れ出るばかりで、当の本人も血を止めようと躍起になっている。


「ははっ、はは………。もう無理だよ、死ぬんだ。君も、僕も」


そう囁くように告げて、そのまま地面に倒れ込む。
あぁ、そうだよ、死ぬんだよ。
僕も。
空良と、姉さんと同じく。
まだなんとか生きているのを確かめるように、胸に手を当てる。
指に伝わるあまやかな鼓動。
目を閉じれば蘇る、雨に溶けるように倒れている君の姿。
朱色に染まった君の姿が今の僕に重なる。
君と同じ最後なら、それも悪くないかもしれない。
君と僕の姿がゆっくりと惑いながら溶けていく。
僕の心の陰に染み込んでゆく、鮮やかな君という名の緑。
透明に、ゆっくりと空が溶けてゆく。
雲の隙間から漏れ出す淡い光。
それがゆっくりと僕の身体を包み込む。
温かい。
懐かしい感覚に閉じた瞼を開けると、そこには微笑む君の姿。


「俺はずっとお前が無事であるようにって祈ってたのに。神様って意地悪だよな」
「いや、僕にはとても優しいみたいだよ。またこうやって空良に会えたし。ねぇ、空良……。星野 空良、もう一度僕と付き合ってください。復讐の為に君を巻き込んでしまった僕だけれど、もし君が許してくれるのなら僕は君ともう一度一緒に居たい」
「許さないよ」
「え……?」
「許さない。だから、もう一度と言わずに一生俺の側で反省してろよ」
「………うん、分かったよ」


そう言って僕は空良に笑いかけて、その手をゆっくりと引いた。


「行こう、空良」
「……あぁ」

















ー君は祈り、僕は連れゆく
















はい、意味不明な部分がかなり多かった作品でした。
いや、もはや作品と呼べないシロモノでしたWw
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ