短編

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結城の奴が無駄に格好つけて出ていってから数分後。
俺は非常に重大な事に気がついた。


……………結城って、日下の奴と同室じゃんかよ…………………………。


アイツ、分かっててやってんのか。
おいおい、勘弁してくれ、頼むから。
そしてこんなときに頼むべきは友だろ。
すぐさま携帯を取り出してボタンをプッシュする。


「もっしぃ〜?何か用かな?紫音クン??」
「あのさ、結城の部屋まで鍵を返しに行ってほしいんだけど………」
「は?無理。ふざけんなテメェ。こっちは久しぶりに彩月野(サツキノ)と会話出来てルンルンタイムなんだよ、んな下らないことで電話掛けてくんなボケ」


ものの数十秒で切られた電話。
山崎弟。
相変わらず友達を見捨てる冷たいやつだな、マジで。
じゃあ次は、と気持ちを切り変えて山崎兄の携帯にプッシュ。


「あっ、山崎兄ー?ちょっと頼みた………」
「黙れ、死ね。消えろ」


ツーッツーッと電話の切れる音。
え?今のなに?
ん?俺、なんかした…………?
泣きたくなる目元を押さえながら、次々に携帯に電話をかける。
ことごとく、却下。
え?なに、俺って実はみんなに嫌われてんの?
本気で、そう思った。




まぁ、そうなったらもちろん、自分で返しに行かなきゃいけないわけで。
そうだ。
………笹崖のやつに頼もう!
そう決めた俺は、慌てて笹崖の部屋に行く。
ピンポーンとインターホンを押しても反応がなく、何故かドアが開きっぱなしになっていた。
そのまま入るのは失礼かなと思ったものの、仕方なく部屋に入る。
リビングへと続くドアはほんの少しだけ開いていて、光が漏れていた。


「…………………っ、」


くぐもったような声。
誰かと会話をしているようなのですぐにリビングに入る気にはなれず、その隙間からリビングを覗く。


「ミノッ、ミノッ、ミノッ……………!!!」
「っ………ウイカ……………」


………………すぐにリビングから背を向けた俺は、部屋から速やかに出ていく。
小走りで笹崖の部屋から離れて、ホッと一息をつく。
お楽しみ、だったようです。


「なんだよ、結城のやつ……………………笹崖のヤローが幸せならそれでいいって、もうちゃっかりできてんじゃねーかよ…………」


鍵、返せねーじゃん、、、
明日でもいいかな?とも思ったけれど、あの部屋は朝イチで結城のやつが授業で使っている場所だ。
鍵がなくちゃ、困るだろ。
泣きそうになりながら、仕方なく俺は結城の部屋へと向かった。
 

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