短編

□雨を連れゆく
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雨を連れゆくの歌詞をお題としてお借りしました。
あくまでお題としてなので、曲のイメージを壊したくない方は読まない方がいいかと……。










君に告げられた言葉に、冷えてゆく身体。
次第に冷たい俺の身体は君の体温までも奪ってゆき、つないだ手が冷えてゆく。
君の瞳から溢れる水がゆっくりと頬を伝う。
君は嗚咽を漏らしながら、俺にごめんと謝る。
謝り続ける。
あまりに止めどなく流れ続ける涙に、君の瞼が白く溶けてしまうんじゃないかと疑ってしまうくらいだ。


「どうして君が泣くの」


君が、言い出したくせに。
君は、それを望んでるくせに。
どうして君が泣くの。
どうして、
どうして、俺まで悲しくさせるの?
君が泣きさえしなければ、
謝罪さえしなければ、
偉そうに命令をしてくれていれば、
こんなに悲しくなることはなかったのに。


「さようなら、空良(ソラ)」


君が泣きながら俺に告げた。
俺は、それに何も返せなかった。
言葉にするのは辛すぎるから。
その代わり、僕は心の中で呟いた。


『さようなら、陽雄(ヒユウ)』


ここが俺のたどり着いた場所。
ここが君のたどり着いた場所。

ここが二人のたどり着いた場所。
さようなら。
陽雄と別れた後も、未練がましく彼のその声だけが永遠とリピートされていた。











ー君だけを愛してました
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