短い物語

□小咄集
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『ああカンチガイ』


「う………」
「千?どうしたんだ」

急に座り込んでしまった千尋にリンは心配そうに声をかけた。

「…うるさいねぇ、リンちょっと何だい?」
「ん、気持ち悪いんだってさ」


「大丈夫か〜千?」


――きっとショックが大きかったんだろうよ。


妹分の背を優しくさすってやりながらリンは思う。


――まだ小さいのに、こんな目に会えばムリもねえか


さて次の日。

千尋がハクに豚にされてしまった両親の元へと連れていって貰った後の事だった。

「朝ご飯、まだ食べてなかったろう?千尋が元気になれるようにまじないを掛けて作ったんだ。さあ、お食べ」

そう言ってハクが開いた包みの中には――


「…は、握り飯もらったってぇ?しかも赤飯?」

戻ってきた千尋に事情を説明されると、リンは元々大きな目をさらに丸くして千尋を覗きこんだ。

朝ご飯は要らないというから理由を聞いてみれば…まさかハク様と一緒だったとは。


「うん…私、赤飯嫌いだからちょっと困ったんだけど。でも、せっかくハクが作ってくれたんだもの。頑張ってちゃんと全部食べたの」
「そうか。へぇ〜ハク様がねぇ…」


しかし親切は結構だが普通に考えて赤飯ってのはどうかとリンは思う。
少なくとも両親が豚にされた少女には明らかに不適当だ。


「それと、何だか不思議な事言ってたわ」
「不思議ぃ?」
「うん、あのね…」

ニッコリと優しく笑って彼は言った。

『これでそなたも立派な大人の女性だね…近々必ず妻問いに行くから待っておいで』

「…………」
「?…リンさん?」


――――って、
それ違うからハク様!!

(あいつ…完全に勘違いしてやがる)

リンは顔を引き攣らせた。

恐らく昨夜リンと千のいる女部屋の近くにあの男は居合わせたのだろう。
いや、というより寧ろ千尋の様子を見にわざわざ来ていたのに違いない。
もはや立派なストーカー予備軍。


「アイツ…やばくね?」

思考回路も行動も。


――ああ、カンチガイ♪――


「ねぇリンさん。妻問いって?」
「……忘れとけ」




或友人が気持ち悪い云々のシーン見て一瞬こう思ったらしいので。それはもう頭がよろしくて、洒落でも何でもなく日本でニ本の指に入る某大学の子ですが、時々とんでもな勘違いをやらかしてくれます。
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