Shortstory
□たとえ思いが届かずとも
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私はあなたを信じて待っていますから………
たとえ思いが届かずとも
※連載小説番外編
皆とはぐれてから何日経っただろうか。
行く当てもなく、ただただ仲間を捜し求めて、私はあちこちを渡り歩いていた。
「…………はあ。やっぱりこの近辺にはいないよね…」
『イエローが寝坊するからじゃん』
「そうなんだけどさぁ…」
ポケモン達にもそう言われてしまい、イエローはさらに落ち込んだ。
オーキド博士に皆の行き先を尋ねるも、ルギアの捕獲に行くらしいということしかわからず、正確な場所はわからなかった。
イエローはマサラやトキワの周辺を捜し回ったのだが、そんなところにルギアなどいるはずもなく、ついには捜索を諦めてしまった。
というより、イエロー自身の体力がすでに限界を迎えていた。
一般的なトレーナーならば、ポケモン達と共に、自身も鍛えるため、基礎体力ぐらいはつくはずなのだが、イエローは修行などしたことがなく、全くと言っていいほど体力が無かった。
「……ちょっと休憩しようかな…」
そう言ってイエローが入っていったのは、故郷トキワにある、広大な森………、トキワの森であった。
ここ最近凶暴なポケモン達が増えていて危ないのだが、森の空気は、疲れた体を癒してくれるので、イエローはトキワの森が大好きであった。
そんなトキワの森の中でも、特にお気に入りの場所へ………、“彼”と初めて出会ったあの場所に着くと、イエローは地面にごろりと横になり、うとうとし始めた。
しかし、そんな彼女を、森の凶暴ポケモン達が取り囲んでいた。
イエローはそれに気付くことなく夢の世界へと入り込みそうになっていたが、腰につけてあるモンスターボールに入っているポケモン達がガタガタとボールを揺らしてピンチを伝えたため、なんとか起きることができた。
「ふぁ〜……一体何…………って、うわぁ!」
眠そうに目を擦りながら欠伸を噛み殺していたイエローだったが、野性ポケモン達に威嚇され、ようやく事態が飲み込めたようであった。
「…サンドパンに……マタドガス…それにゴローニャ、オムスターまで!」
イエローは、知らず知らずのうちに冷や汗を掻いていた。
今の自分の力では、倒す事ができないであろう。
しかし、応戦しなければ逃げることはできない。
そう思ったイエローは、自らもポケモンを出し、野性ポケモン達に向かっていった。
「ラッちゃん、怒りの前歯!ドドすけ、ドリルくちばし!ピーすけ、体当たり!」
そう果敢に挑んでいったものの、やはり経験不足のせいか、徐々に追い詰められていった。
そしてついに逃げ場がなくなり、ポケモン達がとどめをさすために攻撃の姿勢をとる。
イエローは、ついに観念し、ダメージを覚悟して目を瞑った。
しかし、いくら待っても衝撃はこなかった。
代わりに耳に飛び込んできたのは、冷たい少年の声。
「…………ピカ、十万ボルト。フッシー、蔓の鞭」
そして、一拍おいて、ポケモン達が倒れた音が聞こえた。
ここにきて、ようやくイエローは目を開いた。
…そこにいたのは、赤き瞳の少年。