Shortstory

□勘違い
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こんなこと、有り得ねえ!


















「レッド先輩元気かな…」



オレは険しいシロガネ山を登りながらそう呟いた。


それに反応するかのように、手持ちのポケモン達がガタガタとボールを揺らした。


その様子を見つつ、オレは思いっきり愚痴をこぼした。



「あー、ほんっとめんどくせー山だよな」



先程から戦いに飢えた野性ポケモン達を倒しながら山を登っているため、仕方がないのだが。


なぜわざわざこんな所に来ているかというと、自分の尊敬する先輩に会って修行をつけてもらうためなのだが。



「ったく、なんで先輩はいつも頂上に籠もるんだよ…」



そう言いつつも、登る足は止まらない。


体は正直だ。


なんて思いつつ、頂上に着いて、先輩を探す。


すると、数メートル先に、見覚えのある赤色が見えた。



「あ、いた。レッド先輩〜!」



オレが大声で名前を呼び、手を振るが、先輩は反応しなかった。



代わりに、ボールからピカチュウを出して、戦闘態勢に入った。



「先……輩?」


「……………………だして」


「?」


「…君の………ポケモンを…。君も、ボクを倒しに来たんでしょ……?」


「へ!?」



オレはその言葉に、自分の耳を疑った。


そして、先輩を凝視した。


……漆黒の髪に、真っ赤な焔の瞳。



いつもと変わり無かった。


しかし、雰囲気が全然違った。


いつもの暖かい笑みはなく、ただどこか儚げな色を瞳に宿し、こちらを見ている。 


…いつもの先輩じゃない。


オレはそう思ったが、とにかく今は勝負を挑まれているため、それを受けるしかなかった。















「……!強ぇ…………」


「…………僕の勝ち、だね…」



先輩との勝負は、オレの負け。


全く手も足も出なかった。



が、今はその悔しさよりも、疑問の方が大きかった。



なぜ先輩がこんな雰囲気になっているのか?


なぜ勝負を仕掛けてきたのか?


なぜオレを知らない人を見る目で見てきたのか?



そして、何より…


勝ったハズなのに、なんでそこまで苦しそうな顔をするのか?



オレには全くわからなかった。



そんなオレに、先輩は…………いや、先輩にそっくりだが、先輩じゃない人が声を掛けてきた。


「…………山、降りないの?」


「…あ、その、降りないッスよ」


「…なんで?」


「待ち人がいるんで」


「…………待ち人?……それはおかしいよ」


「…は?なんでッスか?」


「ここには、僕しかいないから……」
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