Shortstory

□赤誕
1ページ/6ページ





風が穏やかに吹く。



野原を子供達が駈けて行く。




そんな平和なマサラの様子を一望できる丘に、一人の少年が立っていた。


















「………平和、だなあ………」



少年はそう呟くと、ドサッと草に腰を下ろした。



そして億劫そうに腰につけてあるボールに手をのばし、中のポケモン達を外に出した。



そして、どこか遠くを見るかのように、目を細めると、仲間であるポケモン達にこう問い掛けた。



「なあ……平和なこの世界に、オレは必要なのかな……」



その、いかにも気怠げな声に、ポケモン達は思わず主人の顔を伺ってしまった。



しかし、主人の顔を見た瞬間、目を逸らしてしまった。



彼らの主人の赤い瞳は、以前のような輝きを失い、死人のような虚ろな瞳になっていた。



彼らの様子を見て、少年は自嘲するかのように言った。



「……ごめんな。でも………オレは、“戦う者”……戦いの無いこの世には、必要ないんだ」



そんな少年に、ポケモン達は何かを言いたそうにしていたが、所詮は人とポケモン。


言葉が通じなかった。




少年は一番近くにいたピカチュウの頭を撫でながら、こう呟いた。



「いっそのこと………このまま消えてしまいたいよ………」




「いっそのこと何だって?」



独り言のつもりだったのに、呆れたような返事が返ってきたことに驚いて、声がした方に振り向く。



そこには、かつて共に戦った仲間がいた。





「……グリーン………ブルー…………イエロー…………」
















今日はアイツにとって、大事な日だった。



俺はトキワジムを朝早く閉め、ブルーの家に向かった。



「ブルー!」


「あら、今日は早いのね、グリーン。おはよう」



家につくと、すでにブルーは起きていた。



「ブルー……今日は……」


「わかってるわよ。あたしの家に集まるよう、皆に連絡したから、ちゃっちゃと準備しちゃいましょう」


「さすがだな」


「誉め言葉として受け取っておくわ」



そんな会話をしつつ、着々と準備をしていった。


しかし、その準備を中断させるような連絡が、イエローから入った。



「…ブルー、お前のポケギアが鳴ってるぞ」


「イエローからだわ。何があったのかしら……」



ブルーは軽い疑問を持ちながら電話に出たが、話が進むに連れ、彼女の顔から余裕は無くなっていった。



通話が切れ、グリーンが何があったのかと聞くと、彼女はかすれる声で、こう言った。



「レッドが………行方不明だって………」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ