Shortstory
□シンデレラ
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「……か、かわいそうッス……こんな可愛い子がお城に行けないなんて……」
「わ、わかったから、そんなに泣くことなかよ……」
話を聞いた少年は、サファイアがびっくりするくらいに泣き出してしまいました。
「……でも、それなら、協力できるかもしれないッス」
「…協力?」
「そうッス。………お城に、行きたいんスよね?」
「…ま、まあ、そうったい」
「…へへっ。実は、オレ、魔法使いなんスよ!……まだ見習いだけど」
少年は得意気に胸をはって、そう言いました。
当然サファイアは驚きました。
「ま、ま、魔法使いぃ!?」
「そうッス。オレはゴールドって言うんスよ。魔法使いは本来、人の前に姿を見せてはいけないんスけど……今日は、人が皆お城に行ってていないから、空を飛ぶ練習をしてたんスよ。……結局ここの庭に墜落してしまったんスけど」
「へえ〜……すごか……」
「だから、協力できると思うッス!……まずは、服ッスね。舞踏会に行くなら、やっぱドレスじゃないと。………えいっ!」
ゴールドがそんな掛け声と共に、サファイアの方に手を向けると、サファイアの着ていたボロボロの服が、上等な絹の純白のドレスに変わりました。
「な、何が起こったと!?」
「魔法でドレスに変えたんスよ。…あと、これもッス」
そう言って、ゴールドが差し出したのは、一足のガラスの靴でした。
恐る恐る履いてみると、サファイアの足のサイズにピッタリで、純白のドレスによく栄えました。
「おお!やっぱり可愛いッスね!…あとは、移動手段ッスね」
そう言うと、ゴールドはどこからともなく馬車を取り出してきました。
「…よし、これで完璧っと!……じゃあ、舞踏会、楽しんできて下さいッス!オレはまだ見習いだから、十二時に魔法が溶けちゃいますんで、気をつけて下さいッスね」
サファイアは、ゴールドの手を借りつつ、慣れない靴に苦戦しながら、馬車に乗り込みました。
そして、一風変わった魔法使いに感謝すると、お城に向かっていきました。
一人残ったゴールドは、呑気に欠伸をして、
「やっぱいいことしたあとって、気持ちいいな!」
などと言っていましたが、その直後に聞こえてきた声に、ギクリとした様子で固まってしまいました。
「何がいいことだと言うんだ?」
「せ、先輩ぃ!?」
ゴールドがギクシャクと振り返ってみると、ゴールドと同じ格好をした少年二人が空から降りてくるところでした。
「急にどこかに行ったかと思えば、人に魔法を掛けていたなんてな」
「グ、グ、グリーン先輩ぃ!それは誤解ッスよぉ!」
「何が誤解なんだ?」
「…自業自得だ」
「信じてくださいッス、先輩!つーか、シルバー、変な事言うな!」
「事実だろうが。……こいつへの罰則はどうします?」
「………まあ、今回は特別に見逃してやる」
「あ、ありがとうございます!!」
「ただし、帰ったら飛行訓練の補習だ」
「そ、そんな〜…」
そのころ……
自宅の庭で、こんな会話がされているなど、露ほども知らず、サファイアは馬車の中で、王子様の事について、考えていました。