Shortstory

□悪戯
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「…………?電話?」


ポケギアの着信音を耳に捉え、相手を確認する。


ディスプレイには、


“ブルー”の文字。




朝の3時くらいだったので、電話にでたくはなかったが、逆らうと酷い目にあう相手なので、仕方なくでる。



「何の用ッスか?つーか、こんな時間に何でかけてきたんスか?」


『今すぐあたしの家まで来て頂戴』


「え?ちょ、ちょっと待っ……切られた………」



どうやら自分に拒否権はなさそうだ。







    〔悪戯〕 








「ブルー先輩、一体何なんスか!?」


「全くあなたは……人の家に入って最初に言うことがそれなの!?」


「す、すいませんッス…」



現在、ブルー宅に、二人の人物がいた。





一人はブルー。



もう一人は、ゴールド。





ゴールドは夜遅くにブルーに呼び出され、ここに来たのだった。




「まあ、とりあえず座って」





玄関で話すのも悪いので、リビングの椅子に座った二人。



暫くブルー手作りの菓子をつまんでいたが、ふとゴールドは口を開いた。



「…で、そろそろ教えてくれませんッスか?」


「何を?」


「オレを呼び出した目的ッス」


「えーっとね……一緒に悪戯をしないかっていうお誘いかしら?」


「悪戯?」


「ええ」





ブルー曰く、今日の朝、図鑑所有者たちの家を回って、寝起きのところを悪戯するらしい。



それになぜかゴールドも誘われたというワケだ。



「…面白そうッスけど…なんでオレも?」 


「あたしに男子陣の寝起きに悪戯をしろと言うの?」


「あ、ああ、なるほど……(ブルー先輩なら、しそうで怖いな…)」


「それで、男子陣の中で一番悪戯が上手そうなのは、ゴールドだったってワケ」


「そうッスか……よし、ブルー先輩!オレも悪戯したいッス!」


「ホホ♪ゴールドならノってくれると思ったわ。あ、そうそう。悪戯してない方は、ビデオで録画するから」


「え?悪戯をッスか?」


「ええ」


「でも、それって、プライバシーの侵害になるんじゃないッスか?」


「大丈夫よ。後に皆で集まって見たあとは、消去するから」


「……(見るんだ…)」


「ま、とりあえず皆が目を覚ます前に行きましょ♪」


「わ、わかったッス!」





かくして、ブルーとゴールドの悪戯は始まった。













最初のターゲットは…




「…やっぱり、シルバーなんスね」


「わかった?」


「なんとなくッスけど。アイツ、朝早そうだし」


「そうね。よし、行きましょ♪」




ブルーのメタモンが鍵に“へんしん”して、ドアを開ける。




寝室に行くと、幸い(?)まだシルバーは寝ていた。



「……よし、ゴールドお願いね」


「わかったッス」



そう言ってゴールドはシルバーの耳元に口を持っていき…




大声でこう叫んだ。





「ブルー先輩が事故で死んじまった!!」






「……なんだと!?」



驚いたことに、さっきまで寝ていたシルバーが一瞬で跳ね起き、血相を変えてゴールドの胸ぐらを掴んだ。





「シ、シルバー、落ち着けって……」



そのあまりの力強さに、ゴールドが苦しげに顔を歪める。


しかし、シルバーは聞いていなかった。



「ブルー姉さんが死んだとは、本当なのか!?」


「冗談に決まってるでしょう」



さすがにこのままだとゴールドが絞め殺されかねなかったので、ブルーが二人の間に入って止めた。



ブルーの顔を見て、シルバーはホッとした表情になったが、すぐにゴールドを殺気を込めて睨んだ。



「……お前……覚えておけよ……」


「いいのよ、シルバー。これはあたしの提案なんだから」


ブルーに宥められて、渋々殺気を引っ込めるシルバー。


そんな彼の横で、ゴールドは、



(もし、ブルー先輩がいなかったら、オレ、殺されてたな…)



と考えていた。





「ま、最初からいいリアクションが撮れたわね♪」


「そうッスね!」


「じゃ、次行きましょ♪」


「……ド……は、…………………ら、気を………!」



次のターゲットに向かおうとする彼らに、シルバーは何かを叫んだ。


が、彼らには聞こえなかった。
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