Shortstory

□ライオン
1ページ/2ページ






ずっとキミの側に居たい。





だって、キミの事が好きだから。







ライオン








長い雪解けが恵み、いつもの路地に、花の蕾が顔を出す。



そんな中、ただオレは待ち続けていた。


まだ白いため息を吐きながら。


まだアイツはこないのかと見上げた小春日和。



不意に名前を呼ばれた。



「レッドさん?」



声のした方を見れば、愛しいキミ。



オレは、彼女に呼び出されてここに来ていた。



「イエロー。一体何の用?」




何の用かと尋ねると、彼女は寒いそうにほどけたマフラーを直し、頬を赤らめて言った。



「ちょっと…相談があるんです」


「相談?」


「はい。実はボク、好きな人がいるんです」


ズキン…………





胸の奥が痛んだ。





「好きな奴?」


「はい。……といっても、グリーンさんですけどね」


どこか苦笑気味に言ったイエロー。




しかし、その笑顔には優しさが感じられて。





ズキン…………






また胸の奥が痛んだ。





イエローがグリーンの事を好いていたのは知っていた。





だからこそ、グリーンにイエローを渡したくなかった。




けど、それは叶わない。






「グリーンが好きなのか……で、相談って?」



できるだけ優しく言ったつもりだが、少し素っ気なくなってしまったかもしれない。



しかし、イエローはそれに気づかないようで、少しはにかみながらも小さい声で、



「グリーンさんに宛てて…手紙を書いたんですけど……恥ずかしいので代わりに届けてくれませんか?」




その一言で、体の中を静かな熱い何かが駆け回った。



怒りでも悲しみでもない、何かが。



本当は承知したくなかったが、イエローを傷つけたくはなかったから、オレは深く息を吸い込んで、



「……わかった」



と、苦い声を絞りだした。




そう言うと、彼女は見るからに嬉しそうに笑顔になり、オレに近づいて、ポケットから手紙を取り出した。




…オレ宛てじゃない手紙に。





オレにそれを渡す前に、イエローはオレの目の前で手紙にそっと囁いた。



「…彼に届きますように!」









ああ、運命よ。




もし生まれ変わっても、またオレにしてくれ。




キミを側でずっと見ていたいんだ。




たとえキミの隣にいるのが、オレでなくても。



…この思いよ空に響け。



広い世界、長い時代、出会い、そして愛。





オレの背中に、夢はあるのだろうか?
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ