Shortstory

□雪の如く
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あの日の事、今でも覚えているよ。


だから、君だけは。









の如く何にも染まらぬであれ







「ルビー!早よう来るったい!」


「わかったからもう少し静かにしてくれないかな…?」



時は12月24日の冬の真っ只中、各町は来るクリスマスに向けて華やかにライトアップされたり売りつくしセール等を行ったりして賑わっていた。


それはここ、ホウエン地方のミナモシティでも同じ事であった。


特にミナモシティは、他地方にまで誇る大きなデパートやコンテスト会場、港等があり、町はクリスマス気分の人々で溢れかえっていた。


こんな町では、少し歩けばすぐに甘い雰囲気のカップルに出会うことが出来る。


今日、12月24日…つまり、クリスマスイヴの夜といえば、彼らのような者にとっては、絶好の告白時なのであろう。


そんな甘い雰囲気で満たされたミナモシティに、その場の雰囲気にそぐわない元気さを持った少女と、そんな少女を見て呆れた表情を浮かべている少年がやってきたのは、太陽が少し西に傾き始めた午後4時の事だった。



「もう、ルビー遅いと!急がんと間に合わんとよ?」


「わかってるよ。全く、君はいつでも元気なんだね…サファイア」



先にミナモシティに到着していた少女、サファイアは、後からやってきた少年、ルビーを見て、やれ遅いだのもっと急げだの文句を言い始めたが、ルビーはそんな彼女の様子に更に溜め息をついただけだった。



「元気で何が悪か?」


「別に悪いとは言ってないさ。それよりも早く用事を済ませて帰らないと…」



ルビーの様子に、サファイアは一人拗ねたような様子を見せたが、ルビーは早々にサファイアの相手を止め、今日ここミナモにやってきた理由を思い出していた。


時は数日前に遡る…



***



「…え?ブルーさん、今、何て…」


「だから、25日にはクリスマスパーティーを開くから、前日の24日にルビーとサファイアの二人で買い出しに行ってほしいって言ったのよ」



その日は、少し早いが、シルバーの誕生日記念パーティーという事でカントーからホウエンの図鑑所有者全員が集まっていた。


そのパーティーの途中で、ルビーはブルーに呼び出されて、上記の事を聞かされたのだった。



「でも、なんで僕達だけなんですか?」



ルビーはその事を聞いて、少し考えつつブルーに問い返した。


その問いに対して、ブルーは至って真顔で答えた。



「なんでって、あたし達カントー組は料理、ジョウト組とエメラルドは飾り付けだからよ」


「なんでエメラルドが飾り付けなんですか…」



ブルーの答えに、ルビーは少々面倒くさそうに、そして呆れ気味に呟きを返した。


ところが、ブルーは、そんなルビーの顔を見て、ニヤリと悪戯っ子のような表情を浮かべ、こう言った。



「あら?口ではそんな事言いつつも、顔はとても嬉しそうよ?」


「…さすがブルーさんですね」



ルビーはそう言って諦めがちにため息をついた。


先程は面倒だといった表情をしていたルビーだったが、実は内心ではブルーの言った通りラッキーだと思っていた。


確かに、クリスマスイブに自分の思い人と二人で過ごせるのなら、ラッキーに越した事は無いのだが。



「ま、25日までには帰ってきて頂戴ね?」


「ブルーさん…いくらなんでも買出しにそんなに時間はかかりませんよ?」


「そうかしら?あなた達なら有り得る事だと思ったんだけど?」


「…取り敢えず、24日、買出しに行きますね」



ルビーは、愉快そうな表情でこちらを見つめるブルーに心の内で感謝しつつ、表向きはぶっきらぼうにそう言った。



「ありがとう!あんた達以外、誰も買出しに行きたがらなかったのよね〜」



…はめられた。


ブルーの笑顔を見て、ルビーはそう悟った。



「…だけどまあ、サファイアと二人で行けるなら…買出しもいいかな」


「でしょ?じゃ、24日はよろしくね!」


「はあ…わかりましたよ」



そうして、ルビーとサファイアの買出しという名のパシリが決定したのであった。
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