囚われの罪人

□約束の時
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かつてカントー・ジョウト地方を震撼させたロケット団事件。






その事件に立ち向かっていった少年少女達がシルフカンパニーでの決戦を終えてから、一年の時が過ぎようとしていた。
















「郵便でーす!」



カントー地方トキワシティ。


ここのトキワジムに、最近新しいジムリーダーが就職した。


そのまだ少年とも言える歳のジムリーダーは、その真面目な仕事ぶりと、誰もが見惚れる容姿と、そして何より第九回セキエイリーグ優勝者という実力のせいで、挑戦者が絶えることなく、かなり多忙な毎日を過ごしていた。


この日も朝早くからジムにやってきた少年は、早速現れた挑戦者の相手をしていたが、郵便屋が荷物を届けにきたのを確認し、一旦試合を中断させた。



「…すまない。少し郵便物を受け取ってくる」


「わかりました!」



対戦相手である少女は、そう答えた。


実はこの少女、少年と認識があり、よくジムに挑戦しにきていた。


少年は少女が頷いたのを確認し、郵便物を受け取りにジムの入り口に足を運んだ。



「第九回セキエイリーグ優勝者、グリーンさんですか?」


「ああ」



少年…グリーンが頷いたのを確認すると、郵便屋は配達物を詰めたバッグを漁り始めた。


一方のグリーンは、郵便屋の言葉に驚いていた。


自分に届く配達物には、ほぼ例外なくトキワジムジムリーダーという肩書きがついていた。


しかし、この郵便屋は第九回セキエイリーグ優勝者と言った。


ただの偶然か、それとも…


しかし、グリーンのその疑問は、ようやく郵便屋が差し出してきた手紙の送り主を見て解消された。



「あ、これだ!…はい、間違いなくお渡ししましたので!」



郵便屋はそう言って一礼すると、次の配達先に向かっていった。


グリーンはその場で手紙を開封して読んだ。


その手紙の送り主は、



「ポケモン協会から、か……」







「あ、グリーンさん、お帰りなさい!」



グリーンがジムの闘技場に戻ると、ずっと待ってたであろう少女が笑顔で出迎えてくれた。


グリーンはそんな少女に申し訳なさそうにこう言った。



「すまない、イエロー。今日はもう、これで終わりにしてもいいか?」


「わかりました。…何かあったんですか?」



試合を中止され、少女…イエローは怒りこそはしなかったが、何かあったのかと不思議そうな表情をした。


グリーンはそんな彼女にこう答えた。



「…明日は何の日か、覚えているか?」


「え?えーっと……何でしたっけ?」


「…第十回セキエイリーグだ」


「あ!そういえば明日でしたね…」


「それで、俺は前大会優勝者として、エキシビションマッチをやらないといけないらしい」


「え?誰とですか?」



グリーンの言葉に、イエローが不思議そうに返す。



「…それが、秘密、だそうだ。どうやら、協会が明日の大会に参加する一般トレーナーから強そうな奴を選定したらしくてな…そいつは俺と戦うと知らされているが、俺はそいつが誰だか知らされないらしい」


「ええ!?だったら、グリーンさん、不利じゃないですか?」



あまりにグリーンに不利な条件に、イエローは思わず非難の声をあげてしまった。


グリーンはそんな彼女に笑いかけると、自信有りげにこう言った。



「フ、そこら辺の奴に負けやしないさ。……まあ、油断はできないからな。だから、今日はトレーニングに時間を費やしたいんだ」


「わかりました。じゃあ、出ていきがてらジム閉鎖の看板を出していきますね」


そう言って出ていこうとしたイエローに、グリーンが不思議そうに声を掛けた。



「わざわざ出ていかなくても、ジムの闘技場を貸してやるから特訓すればいいぞ?」



イエローはその言葉にふわりと笑って答えた。



「それではグリーンさんの邪魔になってしまうでしょう?それに、明日のリーグ、グリーンさんも出るのでしょう?」


「ああ。本戦からだがな。それがどうかしたか?」


「…私も、明日のリーグに出ようと思うんです。だから…一人で特訓してきます」


「…わかった」



対戦するかもしれない相手に自分の手の内を見せるのは自滅行為。


それがわかっているグリーンは、イエローが出ていくのを引き止めはしなかった。



「………お前は、ちゃんと出るんだろうな?」



イエローが出ていき、一人残されたグリーンは誰に話し掛けるでもなく、そう呟いていた。
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