囚われの罪人
□熱き想い
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闇に堕ちた少年は、
かつての仲間達とぶつかり合って、そして助けられ、
無事に光の世界へと戻ってきた。
あとは最後の決着を着けるのみ。
「……なあ、グリーン」
「どうした?」
無事に和解したレッドとグリーン達。
決着もついた事だし、シルフカンパニーから出ようとしていたグリーン達に、レッドが声を掛けた。
「今からどこに行くんだ?」
「…とりあえずマサラに帰ろうと思ってるが、それがどうかしたか?」
グリーンが答えると、レッドは腕を組んで何かを考え出した。
グリーンはそんな彼が何かを言うのを待っていたが、やがて彼が発した言葉を聞いて、一瞬固まってしまった。
「…じゃあ、ここでお別れになるな」
「……は?どういう意味だ?」
至って普通の調子で言ったレッドに、グリーンが困惑気味に尋ねる。
尋ねられたレッドは、不思議そうな表情を浮かべ、同じく不思議そうな声で答えた。
「どういう意味って……これからグリーン達はマサラに帰るんだろ?オレはこのままアイツの…サカキの所に向かうから、ここでお別れだっていう意味だけど?」
「な!?お前、一人で決着をつけにでも行く気か!?」
「…そうだけど?何か問題あったか?」
いきなり声の音量を上げたグリーンに、少々迷惑そうな視線を向けながら、レッドは答えた。
一方のグリーンは、声の音量を下げることも無く、再びレッドの胸倉を掴みながら叫んだ。
「どこのアホが一人で決着を…しかも、一回負けた相手との決着をつけにいくんだ!!」
「ど、どこのアホって言われても…」
あまりの音量に頭がクラクラするのを感じながら、レッドはしどろもどろに言った。
「グリーン、大声出してどうしたの?」
まさに、救世主登場。
グリーンの大声に惹かれてか、傷ついたポケモン達の治療を行っていたブルー、イエロー、ゴールド、シルバー、クリスがやってきた。
レッドはすがりつくような目でやってきたブルーを見、ブルーはそんなレッドの視線と二人の態勢を見て大方の事を理解した。
「…またこの馬鹿が何かしでかしたんでしょ?」
ブルーの呆れたような声に、グリーンは頷いた。
「そうだ」
「まあ、話を詳しく聞かせて頂戴。…レッドを離してあげてからね」
ブルーのその一声により、レッドはグリーンの手から開放された。
「助かったよ、ブルー」
「貸しにしとくから気にしないで」
「…やっぱりか」
さも当たり前といった風に言うブルーと、苦笑気味に答えるレッド。
そして、自業自得だと言わんばかりのグリーン。
そんな彼らの様子を見ていたイエロー達…特にジョウト組は、これが本来の彼の、レッドの姿なのだと感心していた。
ロケット団にいた頃とは違い、彼は明るく無邪気で、それでありながらどこか人を惹きつける魅力を持っている。
これならオーキド博士が彼に図鑑を渡した理由がよくわかる。
しかし、今は彼の本来の姿に感心している場合ではないのだ。
「…とにかく、何事か話して頂戴」
ブルーにそう言われて、レッドは口をつぐんだが、隠す必要など考えてもいないグリーンは代わりに口を開くと、さっきのレッドの言葉をそのまま繰り返し、彼らに説明した。