囚われの罪人
□最終決戦W-囚われの罪人-
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「………………」
「………………」
ニョロボンとゴルダックは、互いに相手を睨みながら、自分の主人の指示を待っている。
その主人達…レッドとグリーンも互いに無言で相手を睨み付けている。…いや、グリーンが一方的に睨み付けているといった方が適切であろうか。
レッドはただ静かにグリーンを見ているだけだ。
互いに隙の探り合いをしているため、その場には異様な静けさが漂っていた。
今なら数メートル先で針を落としたとしても、その音がはっきりと聞こえてきそうだった。
そんな中、互いに微動だにしない状態がどれだけ続いただろうか。
ずっとグリーンを見ていたレッドが、瞳をスッと閉じた。
それを隙と見たグリーンが、ゴルダックに指示を出した。
…沈黙が破られた瞬間だった。
「…!
ゴルダック、ハイドロポンプ!」
「…………」
ゴルダックのハイドロポンプが真直ぐニョロボンに飛んでゆく。
ニョロボンは水タイプであるから、当たったとしてもそこまでダメージは期待できないが、怯ませるぐらいは出来る。
それに、ニョロボン自身、レッドからの指示を待っていて動かないので、もしこのままレッドが動かなければ一気に優勢になる。
グリーンはそう確信した。
しかし、
「……………甘いぞ」
レッドが身の毛がよだつような低い声でそう言うと同時に、瞳を閉じたままニョロボンに声を掛けた。
「……ニョロ」
それを聞いたニョロボンは、名を呼ばれただけにも関わらず、主人の言いたい事を察して、ゴルダックのハイドロポンプを躱すと、そのままゴルダックの元へと走っていった。
そして、渾身のアッパーをゴルダックの顎に放った。
攻撃が躱された上、レッドが何も指示していないのに攻撃してきた事に虚をつかれ、グリーンは動くことが出来なかった。
ゴルダックはそのまま殴り飛ばされ、部屋の壁に打ち付けられた。
常人ならば、ここで力の差を悟り、諦めるか絶望の淵に追いやられるだろう。
しかし、今戦っているのは、良くも悪くも常人離れした少年同士だ。
レッドは、グリーンがこれぐらいで諦めるとは考えていなかったし、グリーンも最初から諦めるという事を頭に入れていないようだった。
慌てずに冷静にゴルダックの様子を見る。
「ゴルダック………まだいけるか?」
グリーンの問い掛けに、ゴルダックは頷いて肯定を示した。
グリーンはそのゴルダックの様子に、これならまだいけると思い、再びニョロボンへの攻撃を指示しようとした。
しかし、そこに、冷酷な一言が飛び込んできた。
「…ニョロ、ばくれつパンチ」
その指示に従い、ニョロボンはまだ態勢を整えられていないグリーン達に襲い掛かった。
「グリーンっ!!」
傍らで見ていたブルー達の悲鳴が響き渡った。