囚われの罪人
□最終決戦W-囚われの罪人-
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激闘が渦巻く中、
仲間への想いが勝つのか。
それとも…………
「……そうだ。いい物見せてやるよ…」
いよいよ対決の開始かと思われた時、レッドはそう言った。
「いい物だと?」
グリーン達はレッドの言葉に首を傾げたが、その“いい物”を見た瞬間、激しい怒りが全身を駆け巡った。
レッドが何かのスイッチを押すと、彼の背後に何かカプセルのような物が現れた。
その中に居たのは…
「!
おじいちゃん!!」
「レッド………あなた、何て事を!」
マサラでレッドに攫われたオーキド博士が、そのカプセルのような物の中に捕われていた。
その身体はボロボロで、気を失っているようであった。
グリーンはそれを見るなり、ボールからストライクを呼び出して、命じた。
「ストライク、きりさくだ!」
ストライクはカプセルに向かっていき、その刄を振り上げた。
…しかし、
「何!?」
カプセルが破壊される事は無く、逆にストライクが弾き返された。
その様子を見ていたレッドが淡々と言った。
「…無駄だ。そのカプセルは、バッジエネルギー増幅器で強化されたミュウツーのバリアに覆われている。バッジエネルギー増幅器を破壊し、ミュウツーを倒さないかぎり破壊する事はできないぞ」
「…………ない」
「…?
何か言ったか?」
「…許さない、と言ったんだ………」
グリーンは、普段の彼からは想像も出来ないぐらいに怒りを剥き出しにしていた。
そのあまりの迫力に、ブルー達でさえ怯んでしまったが、レッドは相変わらず平然としていた。
「……博士を助けたければ、オレを倒してみろ。倒せたら、解放してやる」
「…言われなくても、絶対にお前は倒す。お前のしてきた事は、許される事じゃない…」
「…それがどうした?」
罪悪感など微塵も見せず、あっけらかんにレッドは言った。
そのレッドの様子に、ついにグリーンがキレた。
「お前だけは………許さない!!」
グリーンのその言葉と同時に、レッドとグリーンがボールを取り出し、ポケモンを呼び出した。
呼び出されたのは、ゴルダックとニョロボン。
「「……行くぞ!」」
二人の声が重なった。
「…、グリーン!」
先程からのレッドの非情な言葉とグリーンの怒りの迫力に怯えてしまい、すっかり傍観者と化していたブルー達が、二人の戦いが始まったことにより我に帰った。
ブルー達は自身もボールを取り出した。
そして、戦いに加勢するつもりだったのだが。
「……皆。悪いが、ここは引いてくれないか?」
他ならぬグリーン自身の言葉によって、その行動は止められた。
「な……何言ってんのよ!あんた、一人でレッドに勝てるとでも思ってるの!?」
ブルーの絶叫に、グリーンは恐ろしく静かに答えた。
「…我儘だとわかっているが、レッドとの決着は、俺一人で着けたいんだ」
グリーンのその言葉に籠められた想いを理解し、ブルーは渋々引き下がることにした。
グリーンは、家族が攫われ、傷つけられた事により激昂しているのだ。
ならば、自分はその復讐劇に加わるべきではない。
そう判断したブルーは、今にも飛び出していきそうだったゴールド達を押さえ、心配そうに、だが彼女らしい悪戯な笑みを浮かべ、グリーンに言った。
「…レッドの事はあんたに任せたわ。負けたら承知しないわよ!」
「ああ。わかってる」
グリーンもそれに対し、ニヤリと笑みを浮かべると、片手を上げて答えを示した。
しかし、今、この時の彼の本当の想いは、ブルー達にも、そしてレッドにもわからない物だった。
グリーン自身も、自分の中にいろいろな感情が複雑に渦巻いているのを感じていて、自分自身の想いがよくわかってはいなかったが、ただ一つわかっていることがあった。
……彼を、レッドを絶対に倒す。
この想いだけは、ずっと前から揺るがない物だった。