囚われの罪人
□復活
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………誰も気付かない
………誰もわからない
………彼の、苦しみが。
「おじいちゃん、入るぞ」
マサラタウンのオーキド博士の研究所に、一人の少年が入っていった。
彼は、ポケモンリーグ優勝者、グリーン。
この二年間、腕に自信のある強者どもに幾度となく勝負を挑まれたのだが、彼はそれらを全て断っていた。
理由は単純。
…他にすることがあったから。
彼は、二年間ずっとあるもの…ある人物を追っている。
グリーン、リーグ準優勝者ブルー、オーキド博士、そして、正義のジムリーダーズのカスミ、タケシ、エリカ、カツラは、同じく人を探していた。
その人物の名は…
「おじいちゃん、レッドに関する情報は手に入ったのか?」
…レッド。
彼らが探している、少年。
二年前に偶然出会った彼らは、それぞれ反発しあいながらも、最後にはロケット団を倒すまでに至った。
そして、ポケモンリーグでの再会を誓ったのだ。
しかし、リーグには彼は出ていなかった。
彼の性格上、誓いを破るとは考えられない。
となると、必然的に彼の身に何かが起こったのだ。
以来二年間、ずっと探し続けているのに、全く手がかりが得られていなかったのだ。
これ以上の捜索は時間の無駄か…?
そう思ったグリーンは、彼の祖父、オーキドに会いにきたのだ。
…これが吉とでた。
「おお、グリーン。待っておったぞ」
「おじいちゃん?何かわかったのか??」
「まあ待て。今ブルーも呼んだから、ブルーがきてから話そう」
博士がそう言った次の瞬間。
「博士ー!何かわかったのー?」
ブルーが入ってきた。
「ブ、ブルー!?なぜこんな早くにこれたのじゃ?」
「ちょうどこようと思ってたところだったの。ナイスタイミングだったわ♪」
そう言って笑ってみせたブルーだが、すぐに顔を引き締めた。
「…で、何がわかったんですか?」
すると、博士も厳しい表情で言った。
「レッドの最後の目撃者がわかったんじゃ」
ちょうどそのころ。
ロケット団アジトにて、組織復活が宣言された。
「サカキ様。少し聞きたいことが」
復活宣言のあと、ナツメがサカキに尋ねた。
「なんだ?」
「アイツを味方にしてから…なぜ復活まで二年間もかかったんですか?それになぜアイツはすぐにどこかに行ったんですか?」
ナツメの言うアイツとは…
先日紹介された、新しい仲間。
かつ、グリーンたちが探している張本人である、レッド。
復活宣言のとき、相変わらず無表情でサカキの側にいたが、その後すぐにどこかに行ってしまった。
サカキはその問いに、少し苦笑気味に答えた。
「…ヤツのケガがかなり重症だったからだ」
そう言いながら、サカキは二年前のことを思い出す。
あの時、すぐに治療させたのが正解だった。
少しでも遅れていれば…
だが、やはり重症なことには変わりなく、以前ほどにまで動けるようになるまで時間がかかったのだ。
二年がたった今でも、まだ傷は完全にはふさがっていない。
それを聞いたナツメは、顔が強ばるのを感じた。
「…では、ヤツがいなくなったのは…」
「治療を受けに行かせたからだ。何せヤツにはこれからたくさん働いてもらわないといけないからな…」
サカキは笑みを浮かべていた。